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腹一杯食うとガンになる

私の書棚から講演の資料を探していたら、「食卓の怪談-新あぶない食品物語」(溝口敦:小学館,1999.4.10発行)が目に止まりました。久々にページをめくっていたら、「腹八分目にガン抑止効果がある」ということをマウスの実験で確認した大阪府立大学食品代謝栄養学教授の話がありました。放っておけばいつまででも食い続ける習性があるマウスにガン細胞を皮下注射して少食とガンの関係を検討した実験ですが、結論を云えば、腹一杯食ったマウス群は全滅し、6割程度の食事制限をさせたマウス群でのみガンの抑制効果がみられたわけです。なぜそうなるかについて、当時は少食ほど抗腫瘍作用物質や免疫系物質が増加することくらいしかわかっていませんでした。少食は抗ウイルス作用物質も賦活させるので、それは、ガンだけでなく他の細菌やウイルスの病気にもかかりにくい体作りにつながると云うことです。

食べすぎが、メタボリックシンドロームや肥満につながって動脈硬化を進めるから不健康だというだけではなく、それが体に良いものであれ悪いものであれ、たくさん食べすぎればガンや感染症につながるという、とても怖くて大きな戒めです。

日本人は「ガン」という言葉に敏感ですから、なかなか減食ができない方への動機付けにはもってこいの話です。ただ、どれだけ怖い理屈を並べられても、「据え膳食わぬは男の恥」(ちょっと意味が違うか)、この程度の脅しでは、目の前に並んだご馳走を残す理由にはなれないのかもしれませんな。

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