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やめられないからはじめない?

「クスリを飲み始めるとやめられなくなるから、飲まない!」

昔からずっと気になっていた言葉です。これだけ医療情報が溢れるようになったのに、いまだにこの言葉がまことしやかに語られていることに驚きます。一体だれが一番最初に云い始めたのでしょうか。「飲んでも飲まなくても良いけど、どっちにする?」と質問されたと勘違いしているのでしょうか?

たとえば高血圧のクスリ。高血圧症に対して早期からきちんと適正な内服を始めると約30~40%程度の人がクスリをやめられるようになると云われています。でも、飲むべき時期に飲まずに、もう元に戻れないレベルまで引っ張って飲み始めたらやめられなくなるのは当然です。早期のまだ弾力性のある血管であれば戻せる可能性がありますが、血管の壁に強い圧力が長期間加わって血管に硬化が始まってからでは元には戻れません。第一、もし「やめられなくなる」ものだったら、むしろ早くからさっさと飲み始めないと危ないということでしかないように思います。

もちろん、高血圧の治療の基本は、運動療法であり食事療法であり十分な睡眠でありストレス解除(生活療法)です。これらのことを早期からきちんと行うと血圧を改善させることができます。でも、それを行っても十分な降圧ができないのであれば、さらなる修行僧のような人生を上乗せしてもおそらく血圧は下がらないと思います。私は、「クスリは毒物」と割り切っています。ですから飲まないですむなら飲まないにこしたことはないと思います。でも、そんな毒物でも、飲んだ方がかえって生活の質を良くする場合が多いことも知っています。それが健康食品であっても特保食品であっても構いませんが、それをコンスタントに飲み続けなければならない点で云えば変わりはありません。むしろクスリの方がその他の効果(心臓の保護、血糖コントロール、腎臓保護など)を期待できるメリットはあります。もっとも、「飲み始めるとやめられなくなるから飲まない」という人に限って、むしろあまり努力はしたくない(していない)人が少なくない、というのが私の印象です。

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