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90歳の隣りのじいさん

ある企業で、生活習慣病の人たちを集めたセミナーを企画しました。そのときに参加者の方から質問されたことがあります。

「うちの隣りに住んでいるじいさんは、いつも昼から大酒飲んで、タバコもスパスパ吸って、家でゴロゴロしています。腹もでっぷり出ていますが、とても元気です。しかももう90歳を有に越えて長生きです。できるなら私もあのじいさんのような人生を送りたいと思うのですが、どうでしょう?」

周りの参加者は面白そうに笑っていました。でも、私は特に何の矛盾も感じませんでした。

「そのおじいさんとあなたを重ね合わせても無駄だと思います。まず第一に、彼は激動の90年間に戦争も含めて幾多の自然淘汰の波をかいくぐりながら生き抜いてきたわけですから、それ自体が選びぬかれた人間です。彼の体質と運命がそうさせたわけですから、あなたが彼の真似をしても意味がありません。しかも、彼の世代はつい最近まで大したものも食べられず肉体を使うしかない人生を送ってきたわけで、動脈硬化の原因になる酸化ストレスに曝されてきた量が全く違います。彼の生きてきた時代とあなたの生きている時代が違っている以上、同じことをしても同じ結果にはならないでしょうね。」

まあ、わかりきった陳腐な回答ではありましたが、答えながら、現代社会を生きることの大変さを痛感したことを覚えています。現在、日本人の中で心身共に一番元気があるのは90歳代の人たちだと思います。社会的には超過酷な時代を生き抜いてきた彼らは、実は人類学的には一番理想的な時代を生きてきたのではないかと思います。こんな人たちに、コレステロール値が高いからとかちょっと血圧が高いからとかいう理由で安易に内服薬を処方したり食事療法を強要したりすると、絶対に体調を壊す危険性があるので要注意です。

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