動脈硬化は怖いですか?後編
ところが一方で、「動脈硬化」という得体の知れない怪物に対して無意味に怖がっている人も少なくありません。
「レントゲンで大動脈にちょっと石灰化(動脈硬化)が見られます。」「眼底検査で軽い動脈硬化所見が認められます。12ヵ月後に再検査を受けてください。」などと健診報告書に書かれていたと云って、異常に深刻な顔をして「動脈硬化ドックを受けたい」とか、「動脈硬化は大丈夫でしょうか」とか質問する受診者が、男女を問わず増えてきた気がします。
「動脈硬化」という言葉が一人歩きしすぎて、実はあまり理解されていないのではないでしょうか。一般にいうところの「動脈硬化」には大別して2種類あります。老化としての動脈硬化と病気としての動脈硬化です。動脈は年齢とともに当然老化してきます。全体的に大きく厚ぼったくなってきます。こういう老化としての動脈硬化は、変性コレステロールが病的に動脈の壁を通過して内膜下に入り込んでいつでも壊れそうになる「粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム変性)」とは全く別ものです。一定の年齢になると何らかの動脈硬化は当然出てきますので、必ずしも「動脈硬化=病気」とは限りません。無用な心配ばかりしていないかどうかを確認してみてください。
ただ、病的な動脈硬化が軽くあるとしても、することは決まっています。「無駄に動く」「無駄に食わない」「ストレスを溜めない」「タバコを吸わない」。心配な方は、ちょうど良い機会ですから、今こそそんな理想的な生活を始める動機付け(言い訳)にしてみてください。
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コメント
まさに「健康診断」で「大動脈に動脈硬化があります」と言われ、送られてきた結果に「腹部大動脈石灰化疑」とあり、“疑”じゃなくて“動脈硬化”と言ったじゃないか! と怒りながら、Webであちこち病院をさがしていた50歳女性です。
昨年9月からウェイトトレーニングを初め11月から週末に少しずつジョグし、右側の腰から足指までが少し痺れる状況にあったので、この健診結果に本当にビビってしまいました。でもこちらのコメントを拝見し、安心して『整形外科』に行くことにしました。
投稿: | 2011年1月20日 (木) 20時52分
コメントをありがとうございました(返信したつもりでしたが送られていなかったみたいです)。
かく云うわたしも、昨年の健診のCT画像にいくつかの石灰化が認められました。説明する先生は軽く流していましたが妙に気味が悪く、その後ガンガンやっていた運動も少し手加減するようになりました(笑)。
投稿: ジャイ | 2011年1月22日 (土) 06時22分
私も、49の時の健康診断で、眼底に軽度の石灰可の所見。 大動脈石灰化、ほか確か腎臓も・・と所見にありました。その時は担当医は経過観測で、日頃の生活習慣をよくすることを勧める旨がかかれていました。会社が変わり昨日、違うところで健康診断を受け、その所見(2年前・昨年は会社を辞めた端境で血液検査くらいしかしてませんん)を先生に話したところ、私は51歳なのですが、49の時にその所見がでて(その前は出てませんでした)普通より石灰化が早い(若い)ですねといわれました。それが非常に心に引っ掛かり、落ち込んでいます。生活習慣は今まで以上に気を付けようと思ってますが、49で石灰化の所見がでて、これから気を付けていけば、遅くはないと思ってよいのでしょうか・・49の時にその所見が出たときは、そんなに心配はしなくて良いといわれたと思いますが・・暗いきもちになり、日頃から、心配性で、妻はむしろそちらを心配していますが・・
投稿: 51歳男性 | 2013年7月12日 (金) 10時33分
51歳男性さま
結論から書くと、気にするだけ損だと思います。まあ「あんた、歳の割に老けとるねえ」と云われたのと同じですから、これをきっかけにアンチエイジングな人生をひた走るならいいきっかけになったと云えるかもしれません。
「大動脈石灰化」ということばは、何の検査で云われたのだろうか?と考えましたが、職場健診の雰囲気からしてCT検査などではなく胸部レントゲン写真なのかな?と推測します。これ、読影する医者の考え方があって、「大動脈の石灰化くらい病気じゃないから読まない」という人と、「所見だから読むだけは読む」という人が居ます。だから、48歳まで大動脈石灰化がなかったのかあったけど指摘しなかったのか写真を比べない限りわかりません(ふつう、急に出現することはあり得ません)。一般的には、高血圧や糖尿病があって野放しの人には懲らしめの意味でわざと書く傾向はありますが、その所見だけでとやかく云われるべきものではありません。
「医者は気軽に口走るけど、そのつぶやきがものすごく気になるんだ」という意見はよく聞きます。わたしたち総合健診医を意識している医者はそんな軽口は叩かないように気を付けていますが、つぶやきは独り言ですから、こっちに面と向かって語られた内容じゃない限り、念仏だと思うのが得策です(気になってしまった以上はそうもいかないでしょうけれど)。
なお、眼底検査で石灰化という所見はないのできっと「軽度の動脈硬化」だと思います(細動脈狭細化とか動脈壁反射亢進とか交叉現象とか)。これは年齢とともに必ず出てくる所見で、程度がピンキリですし判定する医者の主観が入りますから、かなり強い(中等度~高度)評価の場合以外は大した問題ではありません。「腎臓の石灰化」は病気ではありません。組織の老化現象ですから年寄シミとでも思ってください。一般的に動脈以外の「石灰化」は良性所見です。おそらくこの2つについて、健診では「軽度異常」の判定ではないかと思いますが、「異常」ではなく「老化」です。
大動脈と冠動脈の石灰化だらけのわたしですが、「先生はいつも若いですね~」と云われるように日々アンチエイジングな人生に励んでいます。自分で勝手に老けていくのは人生の無駄遣いです。お互い頑張りましょう! ちなみにわたしは先日55歳になりました(笑)
投稿: ジャイ | 2013年7月12日 (金) 20時41分
ありがとうございます。
レントゲンは腹部超音波というものだったと思います。ジェルみたいなのをつけて見るものです。
それでも先生の言われるように、深く心配しなくてもよいですか?
2年前の先生の所見も経過観察で、特に脅すような内容ではなかたのですが、昨日の年の割に・・の言葉で引っ掛かってしまい・・
血圧はそのころは許容範囲ですが、多少高めということで、食生活等、気を付けて経過を見ましょう。という所見もありました。今も同じような値ですので、より、気を付けていきたいと思ってます。
投稿: 51歳男 | 2013年7月12日 (金) 22時17分
51歳男さん
おはようございます。今日もかなり暑くなりそうです。
腹部エコーで見える石灰化は腹部大動脈のことでしょうね。ここは臍の辺りで二股に分かれるところだから割合早くに石灰化が始まりやすい場所です。
ま、「あんたは老け顔だね」と心ない人に言われたとして、若くして老け顔な人が先に老化するわけじゃなく、周りが老化しても自分だけ変わらないから返って年取ると周りより若く見られたりするって、よくあることです。
石灰化が強いといわれてもすることは適度な運動とバランスの良い食習慣とぐっすり寝て快便な日々を過ごすことだけ。理屈で生きる人生はストレスだけかけて病状悪化に加担します。やることやって何かが起きたら天命ですし、人間は煩悩を克服して悟った順に死んでいくわけだから、わたしみたいな煩悩の塊は簡単には卒業証書がもらえないものだと思っています。てなことを毎日ここに書いてますから、また機会があったらおいでください。
血圧は、気にしすぎると上がりますよ!なんて、循環器内科医のわたしが云ってもいいのかしら(笑)
投稿: ジャイ | 2013年7月13日 (土) 07時14分
先生ありがとうございます。
アンチエイジング頑張ってみたいとおもいます!
まだまだ、妻と一緒に健康に暮らしたいので・・・
ちなみに私は波乗りをします。 土日だけですが、
平日も少し、軽い運動をしてみようとおもいます!
投稿: 51歳男性 | 2013年7月13日 (土) 09時31分
カッコえー!
ブラボーでーす。
当分、悟りを開かない人生を送ってください。
投稿: ジャイ | 2013年7月13日 (土) 10時36分