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プライド

やりたいことがあって自ら救急現場を離れて6年になります。部長から、救急当番を年1,2回くらいできないだろうか?と相談を受けました。救急病院の救急外来というのは本当に修羅場の大変さです。若い医者の救急離れや新しい臨床研修医制度による医者不足の影響で、徐々に老齢化だけしてきた救急病院の医者たちが疲弊していくのは、当院でも例外ではありません。

今、現場への復帰に二の足を踏んでいる理由ははっきりしています。6年前まで救急の最前線にいた医者として、もはや当時のような医療水準を提供できる自信がないのです。急性心筋梗塞を疑う患者さんが到着したとして、さてまず何をする?当時は勝手に動いた身体と頭が、ほとんど完全に停止状態です。「そんなことはすぐに慣れるよ」と云われますが、この歳になるとそうはいかないことを自覚しています。患者さんは、どこでも誰でも良いのではなく、○○病院の専門医師のブランドを買うために受診してきているようなものです。ただの人数合わせのために医師免許を持っている者をかき集めただけでは、その期待を裏切ることになる気がします。

「救急は応急処置をするところだから、翌朝までもつ判断だけすればいい。あまり深刻に考えない方がよい。」と云ってくれる医者もいますが、私にはその割り切り方ができません。それが、昔、第一線の医療を提供してきたというプライドなのかもしれません。男の美学として、半身不随になるくらいなら手術は受けない、と云った脳腫瘍の部長を必死で説得したときをふと思い出しました。単なる奢りかもしれません。端から見ると「そんなことで?」と思うことかもしれませんが、意外に大きいこだわりなのです。

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