私が医者になった理由
母方の叔父が若くして精神を患い、ほとんど定職につくことができませんでした。いわゆる神経症の類だったと思います。かなりの気むずかし屋だったと云われていますが、何故か小さな頃から私をかわいがってくれました。心の内をうち明けるのは、親戚の中でも母か私くらいしかいなかったと後で聞きました。時々叔父の部屋に遊びに行きました。たぶん、本人の調子が悪くなったときに私の母に話を聞いてもらいたくて呼んだのに私がくっついていったのだと思います。納屋の二階を改造した叔父の書斎は本の山で雑然としていましたが、それなりに落ち着いた空間でしたので特に何を話すでもないのに部屋に行くのは好きでした。そんな叔父が、通院中の病院で小さな投薬ミスのトラブルに遭い、人間不信になったことがありました。神経症の症状を大きく悪化させてしまい、しばらく入院することにもなりました。
もうあまり良く覚えていませんが、私が医学部を受ける決心をしたのは、そんな叔父の影響だったと記憶しています。普通の考え方と普通の(というよりむしろちょっと高い)インテリジェンシーを持ったとても良い人なのに、ちょっとした人間関係のズレで周りとうまくコミュニケーションを取れず社会から孤立した人たち、そんな人たちの確固たる橋渡しになりたくなったというわけです。医学の医の字も知らなかった私は、短絡的に「精神科医になりたい!」と思いました。
もともと私自体が、話し下手の優柔不断で、すぐに尻込みするタイプ(いまだに変わりません)でしたので、その決心は自分なりに驚きました。高校時代の担任は、私のことを「コツコツと研究室に籠もって研究に没頭するのが向いているタイプ」と評してくれていましたので。
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