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ミイラ取りがミイラになる

7年前、わたしが循環器内科の救急臨床の現場から健診の世界に移ったとき、わたしには絶対伝えたいと思っていたことがありました。「生活習慣病に対して、世間の皆さんがあまりに数字に一喜一憂しすぎている。人間の身体はそんな柔なものではない。ちょっとコレステロールが高くてもそう簡単には心筋梗塞にはならないし、ちょっと血圧が高くても脳卒中になる人はそう多くない。むしろ検査値に囚われすぎてしまって人生をつまらないモノにしないでもらいたい!」ということです。「健診の結果に対して保健師さんが毎年厳しい批判をするので頑張りました!」というある女性が、検査データは素晴らしいのに表情がちっとも楽しそうでなく萎れていました。これでは本末転倒ではないか!それを伝えたかったのです。

ところが、健診の現場にきて、自分が知らなかった臨床データが沢山存在することを知りました。世は自分が思っていたほど甘くない方向に一直線に向かっていることも知りました。たしかに数字に惑わされすぎている人は少なくないですが、本当はもっと気にしてほしいのにほったらかしている人がはるかに多いことも知りました。

健診医になって1年がたったときに、順天堂大学の河盛教授が監修した研修会に参加しました。「生活習慣病放置病!」・・・せっかく健診で病気を見つけておきながらそのまま放置していたために、病気が悪化してからしか私たちの元にはやってこないんです。私たちがどんなに悔しい思いをしているかわかりますか?この状態を作ったのは、あなた方の責任ですよ!・・・彼は我々に熱く語りかけました。臨床現場の代弁をしたくて健診にきたのに、現実には見事に自分の甘さを思い知らされました。

いつの間にか健診センターで一番口うるさい医者になってしまいました。

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