哲学者たち
昨日、ある知的障害者施設の定期健診に行きました。昨日は特に「重度障害」の方が多く来ました。わたしは縁あってこの施設の健診に毎年行かせてもらっています。さすがに「重度障害」なので入所者の歴史も古く、受ける側もする側もかなり慣れてきた印象があります。
約20人の入所者の皆さんが一斉にホールに集まってきました。初めてのスタッフはその異様な雰囲気にギョッとしたことでしょう。ニコニコしている顔、怒っている顔、無表情の顔、泣きながら騒いでいる顔・・・わたしは、いつもと同じ顔(相手がわたしのことを覚えているかどうかは知りませんが)の彼らを見るとホッとします。「今年も全然変わってないなあ」とつい呟いてしまいました。彼らに初めて出会ったのは5、6年も前のことです。彼らは歳を取らないのでしょうか?
哲学者のような顔をして一人でブツブツ念仏を唱えたり、ニコニコしながらホールを走り回ったりしている彼らの頭の中にはどんな世界があるのだろう?毎年彼らに会い、彼らと話し、引っ張り引っ張られしながら、彼らの頭(心)の中の世界にほんの一瞬でもいいからわたしを引き入れてもらいたいと思いますが、いつも素通りされます。だから、彼らと毎日付き合っている引率の先生方につい嫉妬の感情を持ってしまいます。
赤いTシャツを着た一人の青年が静かに採血を受けていました。なかなか血管が見つからず何度も刺されましたが、じっと座っていました。ようやく終わって席を立つとき、彼はおもむろに駆血帯を手にとってそっとキスをしました。「かっこいいなあ」と思ってつい微笑んでしまいました。「先生、今日はずっとニコニコしてませんか?」とスタッフの一人に云われました。「うん。だって楽しいじゃない!」
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