カギをかけるか開けるか
わたしの両親は教師でした。世話をしてくれていた祖母が寝込むようになって叔母の家に移ってから、わたしはずっとカギっ子でした。わたしには4つ違いの姉がいます。彼女の帰りが遅いときなどは一人で留守番をすることになります。学校から帰って一人で留守番をするとき、わたしと姉は全く逆の行動をとります。
恐がりのわたしは、とにかく家中のカギをかけて回ります。知らないところから泥棒が入ってきたら怖いからです。家中の部屋のドアも閉めてしまいます。そして、一番端にある自分の部屋に籠もって遊びます。トイレに行く以外はできるだけその部屋からも出ないようにします。でも姉は、まず家の中の主だったカギを全部開けて回ります。大きな窓のカギも開けます。「そんなことしたら怖いやん。泥棒が入ったらどうするの?」とわたしが非難すると、即座に云い返されました。「泥棒はカギを壊してでも入ってくる。もし泥棒が入ってきたときに、あわててカギを開けようとしても間に合わなくて逃げられないじゃない?泥棒がどこから入ってきてもすぐに逃げられるように開けておくのよ。」と。
不思議と「そんな屁理屈を云って!」とは思いませんでした。うちの姉の云っていることは正解かもしれない、と感心して納得しそうになりましたが、わたしには到底できないことですからその後もカギはかけています。ただ、全く同じ事に対しても発想の仕方には真逆の考え方が存在することを子どもながらに知りました。どっちも、貧乏性の取り越し苦労であろうことには変わりはありませんが。
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コメント
最近のお母様についての文章はいいですね。今回のお姉さまとのやり取りもいい。病気のあれこれについての話もフムフムと思いますが、こういうのを読むと、思いが家族に向かいます。ドクターの今後のご健筆に期待と応援を込めて。
投稿: イーダです | 2008年5月20日 (火) 23時10分
イーダさん
忙しい生活の中でいつも読んでいただきありがとうございます。とても励みになります。
他人にはどうでも良い話ですが、こうやって書き留めることで思い出や考えたことが形になって残ってくれるような気がして、頭に浮かんだときに唐突に書き始めたりしています。最近頭がどんどんボケていきますので、思い出すことと文章にすることはとても大事なリハビリだなと思っています。これからもヒマなときに寄ってください。
投稿: ジャイ0425 | 2008年5月21日 (水) 21時13分