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精査指示に込めた思い

数年前、ある企業健診の心電図判読をしました。ある30歳代の男性の心電図に心室性期外収縮がみつかりました。わたしは、二次精密検査の項目として、「心エコー・トレッドミル検査(運動負荷検査)・ホルター(24時間)心電図」を指示しました。ところがその数週間後、「(その企業の)産業医に相談したら、まだ若いのだからホルター心電図だけでいいと云われた。どうしたらいいか?」と企業の担当者から質問が入っているという連絡を受けました。

心室性期外収縮の全てが危険なわけではありません。治療を要するような危険なものはその中のごくわずかですが、心室性期外収縮を起こす原因疾患が隠れていることがあり、それを見つけだすために精密検査を勧めます。その産業医は期外収縮の原因として狭心症や心筋梗塞などの虚血性疾患を念頭に置いたのだと思います。30歳代に動脈硬化の進行は考えられないから、ホルター検査で日常生活に危険性がないかさえ調べておけば良いと判断したのでしょう。でも、わたしが確認したかったのは心筋症の存在です。あるいは負荷誘発性の期外収縮です。若い世代の突然死の原因は大部分がそれらですから。心筋症は心エコー検査をすればすぐ分かりますが、心電図変化が出てこない限り軽度のうちに検査を受ける機会がありません。そして突然死で発症してしまうことがあります。つまり、若年者だからこそ、あえて心エコー検査と運動負荷検査を受けることを勧めたつもりでした。

若年者だからあえて検査を勧めたわたしと若年者だから検査を削った産業医。なかなか、真の想いは伝わりません。でもわたしは、「是非とも検査を全部やってください」とは答えませんでした。金を払うのは本人です。産業医の進言を曲げさせて無理矢理検査しても心筋症が存在する確率は高くありません。受けて何もなければ不満が出ます。「産業医が責任持つって云うんだから、それでいいんじゃないの?」と大人げなくふて腐れて逃げてしまいました。

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