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医者は修繕屋

急性心筋梗塞の患者さんが緊急入院すると、夜中だろうと休日だろうとポケットベルが鳴ります(今は携帯電話ですか)。心筋に酸素を与える血管(冠動脈)の詰まったところを数時間以内に再開通させると梗塞範囲が狭くなり、心筋梗塞で命を落とす率が格段に低下します。ですから緊急治療は時を選べません。夜が白々と明けるころ、眠たさで気だるくなりながら「今回もいい仕事をしたな」という満足感に浸れるのは、救急治療最前線の醍醐味かもしれません。それから始まる1日の仕事はとても長いですけれど。

でも、そうやって自分の身を削って患者さんの一命を取り留めたと喜んだところで、わたしたちがやったことは所詮大きな体の中の心臓という小さな臓器の表面にある小さな血管の高々数ミリの詰まりを修理したに過ぎません。突然流し台の水道が詰まったからその部分の修理をしたのと同じです。きっと家中の水道管がボロボロに腐っているのでしょうがそれを全部良くしたわけではありません。そこのところを、する側もされる側もつい忘れがちな気がします。

ここには「うまい先生」がいると聞いてはるばるやってきた、という患者さんがいます。この「うまい先生」ということばの響きにどうもわたしは馴染めませんが、結局「名医」とは「腕の良い職人」ということでしょう。わたしは大した腕じゃなかったからさっさと医者をやめました。医者は修繕屋ですが、患者さんの身体の全部を修繕することはできません。全身の修繕ができるのはおそらく患者さん自身だけだと思います。ですから、大した腕のない職人崩れのわたしは、全身修繕が可能な時期の人たちに助言するアドバイザーになろうと考えました。

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