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活力のおすそ分け

阿佐ヶ谷にあるその雑然とした空間は、いつ行っても埃とタバコでモウモウとしていた気がします。黄ばんだ蛍光灯の灯りの元で、彼らはいつも夜中まで汗の臭いを充満させて熱い練習をしていました。

東京の小さな劇団が、現在上演中(7/3~7/13)の公演を最後に21年の幕を閉じます。劇団の主宰の男と看板男優は、大学演劇部時代(http://satoritorinita.cocolog-nifty.com/satoritorinita/2008/06/post_84ab.html)を共にした同期ですので、先週末に観にいってきました。空間の隅々まで行き届いて完成しきったその芝居を観ながら、「プロの集団になったなあ」とちょっと感動し、ちょっと寂しい気分になりました。仲間が遠くの世界に行ってしまったような感覚。今まで何度も彼らの芝居を観てきたのに初めて感じる不思議な心寂しい感覚でした。

彼らが熊本を離れて上京するのと入れ違いの形でわたしは熊本に帰ってきました。安定した職を捨て、芝居をするために上京することを決めた彼らの姿は、わたしにはとても羨ましく映りました。仕事や学会で上京したときに何度か彼らの練習場に出かけたことがあります。仕事を持ちながら、夜中まで芝居に没頭している彼らの姿の中には、いつも熱い勢いを感じました。当時、救急現場の激しさに忙殺されながら抜け殻になりつつあったわたしは、そこで数時間だけの共通の時を過ごすのが楽しみでしたし、そうすることで彼らの大きな活力を分けてもらうことができました。

これからまた、新たな芝居作りを始めると聞いています。成熟してきた彼らには、きっともう当時の熱さは必要なくなっているかもしれません。未熟でも若さと活力がみなぎっていたあの当時を懐かしく思い出しながら、じっと芝居を眺めました。

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