地域医療
地域の病院の医師不足の対策として、熊本大学医学部の定員を5人増やすことが正式に認められたそうです。地方の中核病院の医者不足は本当に深刻な事だと思います。ただ、医者の絶対数が少ないわけではないので、毎年5人多くの医者が生まれたとしても、自治医科大学のような足かせがない限り、地域医療の問題が解決するわけではないのだろうことは容易に推測できます。
わたしが研修医だったころ、「地域医療」などというものに全く興味はありませんでした。医局の先輩医師が市中の病院の診療の手助けをしている話を聞くにつけ、専門領域外の診療をする姿はいい加減に思え、そんな緩い医療は「罪悪だ」とまで思っていました。今ではいわゆるジェネラリストとしての医者の養成プログラムがありますが、わたしのころは研修医時代からすでに完全な専門バカになっていくわけで、中途で大学を離れることは「野に下る」とまで云われていた時代です。自分の専門領域をしっかり極めることがイコール優秀な医者になることだと思っていました。
縁あって早々に野に下り、高度救急医療現場に身を投じることができたわたしは、専門バカに違いはありませんがそれでも大学で頭でっかちになるよりは幸せな人生だったと思います。ただ、その後あちこちの地方の中核病院に勤務する機会が多くなるに従って、こういう地で全人的な医療を続けている常勤の先生方の方が、医者としてははるかに素晴らしいと思うようになりました。こんな感覚になれるにはやはり経験年数が必要なのかもしれません。第一、医者になって数年では、到底実力が追いつきませんから。
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