医者は結果の報告屋
「わたしはもう10年以上毎年ここで人間ドックを受けています。ここにはわたしのすべてのデータがそろっているから安心して任せられます。」
こんな「信者」に近い受診者さんが何人もいます。たいへんありがたいことだと思いますが、この方々はちょっとだけ誤解しています。健診の検査データは受けた数だけ蓄積されますけど、そのデータをずっと診てくれている人は存在しません。検査データがあればその人の全てがわかると思っている様ですが、そんなものではありません。普通の病院やクリニックでは「主治医」がいます。主治医はカルテとデータを眺めながら、この人はどんな病気で、どんな性格で、どんな仕事をしていて、どんな家族構成でなど、情報の山を「その人」の歴史としてきちんと整理しています。でも、健診センターでは、検査をする人も結果説明をする医者も毎年違います。医者はあくまでも「今」を伝えてくれる報告屋に過ぎません。もちろん毎年顔を合わせるので顔見知りになっている人はいますが、あくまでもその刹那刹那のアドバイスをするだけです。データを全部見せろと云われれば今まで受けたすべてのデータを並べることはできますが、過去のデータを眺めても、この人の歴史は語ってはあげられないのです。つまり、データバンクとして健診センターを使うのは良いとしても、健診の医者が家庭医や主治医の代わりにはなれませんから、是非とも身体(と人生)全体を見守ってくれる「主治医」をお近くに捜してほしいと思います。
ちなみに、病院付属の健診センターだから、そのまま病院にもデータが流れていっていると誤解している人もいますが、保険診療部門に健診の個人情報が自動的に漏れ出ることは、あり得ません。
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