三銃士の憂鬱
わたしの研修医時代、CCUには3人のスーパーナースがいました。東京の第一線の心臓救急病院で研修を積んできた彼女たちは、本当に仕事に厳しい人たちでした。CCUは一瞬の判断が生死を分けるシビアな世界です。彼女たちがリーダーとして目を光らせていることで平穏を保っていると云っても過言ではありませんでした。
「先生は患者を殺す気ですか!」・・・妙な処方指示を出しては何度も叱られました。「先生の小ベンにきちんと指導してください!」とわたしの指導医がおこられたりもしました。わたしは心臓救急のノウハウの多くを彼女たちから教わったといっても過言ではありません。とても怖い方々でした。もちろん働くナースたちにはもっと怖い存在でした。畏敬の念を持ちながらも、常に煙たい存在だったようです。
そんな彼女たちの一人があるとき(送別会のときだったか?)ポツリと本音を話してくれました。「煙たがられていることは分かっています。わたしだって、別に好きこのんで憎まれ役になったわけじゃない。でも、誰かがこの役をしなきゃCCUはダメになるのだから。」彼女たちからそのことばを聞いてちょっとホッとしたことを覚えています。孤高の三銃士たちは、各々に結婚という形で現場を離れていきました。
その次の次、あるいはその次の世代くらいのリーダーにとって、彼女たちは「伝説のナース」でした。「わたしは到底彼女たちのような厳しいリーダーにはなれないと思います。第一に、当時の厳しさで臨んだら若いナースたちは付いてきてくれません。そして本音をいえば、わたしはそんな「憎まれ役」を貫けるだけの自信がありません。」若いリーダーたちは堂々とそう語りました。現代社会はどの世界でもそんなものなのかもしれません。
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