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「背広を着た縄文人」

先日の心リハ学会ではイブニングセミナーで「背広を着た縄文人」の名付け親、丸山征郎先生(鹿児島大学)の話がありました。

人類は飢餓とケガと感染との闘いの歴史の中で、一定期間飢餓状態でも生きていける血糖維持機構を発達させ、乏しい塩分を探して取り込み再利用する機構を作り、脂肪を美味しいと感じるセンサーと一度取り込んだら再吸収する仕組みを作り上げて、強かに生き延びてきました。ケガに対して強固な止血機構があるために出血しても瞬時に止血できます。感染防御の免疫機能も何重にも重なり合った機構になって万全を期す。この劣悪環境を生き延びるための完全武装のおかげで、人類には今があるのです。

ところが、ここにきて「トレードオフ現象」が意味を成すことになります。つまり、システムというのは何かを追求すると一方で何かが必ず犠牲になります。血糖は上げやすいが下げにくい。瞬間的な止血システムは血管壁の傷にも過剰に反応し動脈硬化を進め血栓を作らせ易くなる。少量の塩分でも生き延びる機能は高血圧をもたらす。あるいは、重なり合った感染防御機能は酸化LDLも異物と認識し、また過剰な反応によりアレルギー、アトピーを爆発的に増やすこととなりました。

代謝系の流れについて、これまでわたしがずっと受診者さんに話してきた内容に間違いがなかったことが確認されてとても嬉しかったですが、それよりも、マンモスから生き延びるために瞬時に血が止まるようになったことや、感染に対抗する機能が発達しすぎたためにアレルギーが激しくなった事実に、人間のすばらしさともろさを感じて愛おしくなりました。

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