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選択

先日、NHK総合テレビで「村へ来たれ!医学生よ」を見ました。わたしも地域医療の問題を以前書きました(2008.8.31)が、現実の問題としてこれから始まる医者としてのキャリアの選択をしなけらばならない学生たちにとって、初めから「地域医療」を選択肢の中に入れようとしている若者が多くいることに、驚きました。現実にその選択をした人はまだなかなかいないようですが。

「病気を診るのではなく人間をみる」という名言を残した地域医療の師である若月俊一先生のことは、わたしは佐久総合病院の歴史として教わりました。その先生の本に感動し、かの地を毎年訪れていた6年生の医学生の「病気をきちんと診れるようにならないと人間は見れないのではないか」という不安。その不安に対して、「ちずさん(現地で一人暮らしの88歳のおばあさん)に出会ったから、都落ちと云われても山でしばらくちずさんを診たいから来た、でいいじゃないか」と説得する診療所の医師。私には、どちらの気持ちもとても良くわかる気がします。結果として都内の病院を研修先に選んだ彼でしたが、ちずさんと話しているときの心からの笑顔は本当にいい顔でした。どんな医者になるとしても、このときのこの笑顔を一生忘れないでほしいと思いました。

わたしの中学時代の同級生が小学校の教師になったとき、「特殊学級の生徒たちを受け持ちたい」と希望しました。それに対してわたしの母は「特殊学級を受け持つにはそれなりの技術と経験が要る。教師になってすぐにそれに従事できないわけではないけれど、普通の教師を経験してからその世界に行った方がはるかに大きな教師になれると思う」と反対しました。その後、結局彼は障害児には関わらない教師の人生を送りました。

結局わたしも、そんな医者になりきれなかった人間のひとりです。

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