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僻地医療

わたしが東京で働いていたときの上司は、北海道の大学のご出身でした。札幌よりやや北西にある小さな島(まちがってたらごめんなさい)の医者になりたかったというお話を、よく宴会の席でお聞きしました。

「東京にちょっと来い、と呼び寄せられたまま、結局そのまま僻地医療の夢は果たせなかったんですよ。」

酒のために赤味を帯びた上気した顔で、それでも決して語調の乱れることのない紳士然とした口調で、いつもその話をされていました。優秀だったからこそ呼ばれたわけですが、その後しっかりと研鑽を積まれ、わたしがお会いしたときにはすでに日本の第一人者の位置にありました。あのとき、希望通りに島に渡っていたら、日本の医療界には大きな損失になったかもしれません。でも一方で、先生の紳士然とした口調や患者さんを常に敬う態度をみていると、離れ小島で僻地医療に携わっていたとしても、きっと「北のDrコトー」として素晴らしい恩恵を島の民にもたらしたことだろうと思います。

僻地医療の大変なところは自分で判断して自分で責任をもたなければならないところだと思います。中央の医療水準から取り残されるからと言い訳していますが、実のところその自己責任義務に縛られるのが怖いから、僻地医療に行きたがる先生が少ないのではないでしょうか。小児科医や産科医や救急医療従事者の希望者が激減したのも同じ理由でしょう。自分が患者さんのために身を粉にして施した処置がうまくいったら当たり前、悪い方向に行ったら社会から干されるなんて。金をいっぱい積まれても(給料が上がっても)その理不尽が解決しない限り、志の高さだけでは乗り越えられない現実があるのは事実です。難しい問題です。

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