面白いものは面白い
職場の広報誌のコラム転載のバックナンバーはこれが最後です。2007年10月号です。
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面白いものは面白い~笑顔の贈り物
最近、心から笑ったことがありますか?
「破顔一笑」ということばがあります。会心の笑みという意味です。わたしは、人間の顔の中で、無防備に大口をあけてバカ笑いしている顔が一番好きです。人生でもっとも無垢な屈託のない笑いができるのは3歳児のころでしょうか。そして、長い年輪を深いしわの1本1本に刻んだ老人が、かっかっかっと大笑いする姿もまた神々しくてすてきです。
人間以外の動物で、顔に明確な表情があるのは猿・イヌ・ネコだけだそうですが、喜怒哀楽の表現のうち「笑い」は正式には人間にしかない特権のようです。それなのに、面白いものを面白いと表現できない人が、最近急速に増えているように思います。現代の若者には笑わない人が増えています。笑っているのかもしれないけれど笑った顔ができません。表情筋が発達していないようです。小さいころには笑っていたはずなのに一体いつから笑えなくなったのでしょうか。筋肉は使わなければ退化しますから、表情筋が一番発達するはずの小学生・中学生の時期にあまり使っていないことになります。一方で、50歳を過ぎたあたりから「いい歳をして」とか「年甲斐もなく」とかのことばが心の鎧になり始めます。何をみてもくだらないと思い、人前で大笑いをするのがみっともない、と思うことが常識となりはじめます。
笑いはNK細胞などの免疫系を刺激して病気を抑えることが知られています。がんや難病を克服するための「笑い療法」は免疫療法として医療の現場でもこの10年ほどで完全なる市民権を得ました。吉本のグランド花月で行われた笑いと健康についての実験で、大部分の対象者のNK細胞が増えたというのは有名な話です。また、喜怒哀楽の感情を抑えれば抑えるほど交感神経が高ぶって心筋梗塞を起こしやすく危険だというデータもあります。がまんして感情を表に出さないというだけでなく、がまんしていないつもりなのに感情が表に出せなくなっている人も同様です。
面白くないから笑わない。一番大切な子供のころにすでに笑えなくなったのが現在の社会環境の影響であることは容易に想像できます。でも、それをぼやいてもしょうがありません。まずは笑ってみましょう。面白くないなら面白くすればいい。面白いと感じるには少々練習が要りますが、とりあえず口角を上げてみることは簡単にできます。くだらないと思っても笑う。何か面白い面を見つけ出して笑う。案外、本当はそれほど「面白くない」とは思っていないのかもしれません。忙しくて感じる余裕がなくなっているだけなのかもしれません。笑う習慣を体得していくうちに、意外に意味もなく楽しくなったりするものです。「笑う」という動作はきっと神様が与えた大きな贈り物だと思います。
最近、みかけるたびに額に縦じわが増えてきた保健師さんがいます。たしか去年の今頃はとても笑顔がすてきでした。もう一度あの輝いた笑顔を取り戻してもらいたいな、と密かに思っています。
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