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かけ出し医者の年賀状

研修医を明けたばかりの新米医者として今の病院に舞い戻ったとき、わたしはその年に急性心筋梗塞で入院して無事退院した受け持ち患者さん全員に年賀状を出しました。医者としては、未熟なわたしに実地で勉強させていただいた貴重な「先生」であり、人間としては、縁あってお知り合いになっていただいた「人生の先輩」たちでした。病棟担当でしたから、退院後は全く会う機会もなく、その後の元気な姿を想像して一言一言手書きで書き込みました。

返事をいただけた人、いただけなかった人、もうそんな詳しいことは何も覚えていません。個人情報うるさき昨今なら、サマリーに書かれた住所を書き写したこと自体が問題になったかもしれません。その翌年の正月、お世話になっている開業の先生方との親睦新年会の二次会で、ある先生につかまりました。「うちに来ている患者さんに聞いたけど、先生、患者さんに年賀状出したんだって?」「はい。急性心筋梗塞の方だけですけど。」「先生は一体何歳ね?その若さでそんなことする医者見たことないぞ!はっはっは。患者さん、ものすごく感激しとったよ。でも、先生、先生みたいなことされたら、いつも診てる主治医のわたしは立つ瀬がないんよなあ。」・・・その先生はそれだけ云ったら、笑いながら他のテーブルに移っていきました。今までほとんど話したこともない大先輩のドクターでした。ちょっと嬉しく、ちょっとはずかしかった感覚を覚えています。出して良かった、と思いました。

今年も年賀状を準備する時期になって、ふとそんな遠い昔のことを思い出しました。年賀状がいつの間にかあいさつだけの儀式になろうとしています。この機会にほんの少しでも初心に戻ることができたらいいな、と思いました。医者としても、人間としても。

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