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理不尽なきっかけ

わたしが産業医をしている企業の職員にうつ病が増えてきました。最近休職に入った一人のお嬢さんがおかしくなりはじめたきっかけは、本当に理不尽な出来事でした。

彼女は今年入社したばかりの新人さんです。ある日、職場の宴会があり楽しく参加しました。ところが、翌朝出社すると職場の先輩に呼ばれて注意を受けました。「あんなこと云ったら失礼でしょう。もっと注意してちょうだい!」

そんなことを云われても何のことかわかりません。自分が変なことをしたり誰かに失礼な言動をした覚えがないのです。何のことか?と聞くけれど先輩は具体的には答えてくれませんでした。「わたしが何をしたの?」・・・実感のない非難を受けて、彼女は自信をなくしていきました。何かを話すと人を傷つけるかもしれないと思うと怖くてあまりしゃべれなくなり、何をするにも不安になっていきます。そのあと、精神的に不安定になっていくのにさほど時間は要しませんでした。たぶん、単なる勘違いか行き違いがあっただけなのだと思います。それでも、たとえ彼女が普通に職場復帰してもこのときの理不尽な思いはきっと解決しないままに残るでしょう。将来、ただの思い出になったとしても小さな闇の箱は心の隅っこにそっと残り続けることになります。

わたしは遠い昔(大学予備校に通っていた頃)、ある友人に意味もなく怒っているふりをしたことがあります。日頃はとても仲良かったのに、急に不機嫌な顔をして口を利かなくしたのです。ただ面白がってやっただけで何の意味もありませんでした。数日後には仲直りしましたが、あのときの彼の引きつった顔を忘れられません。なんと愚かなことをしたのでしょう。

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