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「眠らない冬眠」(前編)

最近、寒いとすぐに眠くなります。うちにいる10歳半のワンコもこの季節は丸くなって良く眠ります。「寝る子は育つ!」と申しますが、安眠できるかどうか、睡眠の質の善し悪しが、生活習慣病や睡眠時無呼吸に関連するだけでなく、うつ病や老化にまで影響を与えるといわれています。

冬眠をする動物たちは総じて長生きです。たとえ冬眠中に大量の細菌や発ガン性物質にさらされても死にません。この期間に脳が一生懸命働いて、悪い方向に傾いた細胞の修復に専念するのだそうです。つまり、冬眠環境の下では究極の健康管理がなされていることになります。そのメカニズムを人間に応用できないかとシマリスを使って研究している日本のグループがあります。そのレポートによると、冬眠動物たちは寒くなって自分の体温が下がったから冬眠するのではなく、その季節になったら冬眠をうながす物質が自動的に血液中から脳の中に移動して、脳が全身を冬眠状態に誘(いざな)うのだそうです。そして、また時期が来たら今度はその物質が脳から血液中に出て来て冬眠から覚めるしくみです。そのリズムは気温の上下には関係しておらず、周期は常に一定しています。この物質が脳の中に大量にあるときに寒くなると冬眠します。逆に、もし大量にないときに体温を下げてしまったらたちまち死んでしまうといいます。さらにその物質の血液中の量を調整しているのが甲状腺ホルモン(チロキシン)。オタマジャクシをカエルに変態させるホルモンです。以前書いた体内時計のホルモン(BMAL1)もそうですが、自然界を生きていくための機能はカラクリ時計のように本当に精巧にできていると思います。ところが、環境はますます厳しくなり、異常気象が年々その乱れの度を増しています。冬眠動物のこの精巧なカラクリは、気候が乱れてくることで脆く壊れてしまいそうで心配です。

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