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「アタマの理想とカラダの理想」

昨年のうちに懺悔した通り、今回の職場の広報誌のコラムは、ここに書いた内容のツギハギになりました。ちょっと屈辱的ですが、まあこんなこともありましょうぞ。

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今日も今日とて、みんなそろってメタボとの戦いです。戦いはきっと難航していることでしょう。なぜ脂肪は思うほど簡単に減っていかないのでしょうか?ちょっと考えてみてください。「理想」とは何か?「余裕」とは何か?

アタマが考える「理想」とは、余分なエネルギーをできるだけ細胞から取り除いて体内の倉庫を空にすることです。いざとなったらいつでも入れられるスペースを空けていることが「余裕」です。一方、カラダが考える「理想」は、できるだけたくさんのエネルギーを細胞に充満させている状態です。いざとなったら何も食べなくても耐えていけるだけの在庫が倉庫に満たされていることこそが「余裕」です。つまり、アタマとカラダは全く逆の状態を理想だと考えているわけです。一つの個体が、いつもそんな二重支配状態にあるのだから、ことはそう簡単ではありません。会社のトップの意見が真っ向から対立していたら、あるいはチームの首脳陣のビジョンが全く違っていたら、社員や選手はきっと右往左往することでしょう。昔はほとんど飢餓状態の中にあって、貯められるときに貯めておくのが「理想」であり「余裕」だという点でアタマとカラダの意見はいつも一致していましたから、何ら問題はありませんでした。むしろアタマはいかに効率よく貯められるかを考え、カラダは実際に貯められる機能を完成させました。

アタマの方は現代社会が抱える飽食の状態の危機感をきちんと察知し、「これじゃイカン」と真面目に反省して、何とか社会に適応できる戦略を指示しようとしています。でも、カラダの方は飢餓状態のときの記憶が細胞内に脈々と生きているので、いつ襲ってくるかわからない危機的状態にいつも脅えています。急に天変地異が起きたら、あるいは山で遭難したらどうしようか。いつもそんなことを考えています。人類は、この2つの全く違う戦略感覚のシステムがあることによって絶滅することなく生き延びてこられたのだといわれています。

大きなメタボ腹をかかえた旦那さんが憂鬱な顔をして説明室から出ていきます。その後ろをなんら問題のなかった奥さんが優越感に浸りながら背中を押して付いていきます。日常の健診センターでは良く見かける光景です。世が世なら、確実に立場は逆転していただろうにと思うと、ちょっと旦那さんがかわいそうになります。そんな矛盾だらけの大きなハコをかかえて途方にくれている皆様。とても大変ですが、現代社会ではアタマとカラダの両方に納得いかせるのは到底不可能です。カラダに気付かれないように、そっとがんばってください。

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