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新美南吉童話集

わたしの新美南吉のイメージは、「端正な甘いマスク」。29歳で亡くなっていることもあって何か軟弱な優男の印象があり、実はあまり興味がありませんでした(わたしは面食いですが、元気が良いことが必須条件なのです)。もっとも、「童話なんて子どものお遊び」という先入観があったからかもしれません。

先日NHKラジオで新美南吉の紹介(以前「家守綺譚」の紹介をした番組)を聴いて、急に読んでみたくなり、代表作14編を集めた小さな文庫本(岩波文庫)を手に入れました。少々不思議な感じがしました。「童話」って子どもたちに読ませる教訓を交えた寓話だと解釈していましたが、新美南吉のそれの多くは童話というよりも小説、あるいは随筆のようなものです。子どもより大人の方が感じるものが多いように思いました。

ごん狐」や「手袋を買いに」はこんなにタンパクな文章だとは思いませんでした。むしろ世間にある解説文の方がはるかに劇的にオチを紹介しています。そっちを読んでなかったら、「だから何?」と云いたくなるようなメリハリのない文章でした。「牛をつないだ椿の木」は国語の教科書か何かで読んだことがあります。子どものころ、「なんと道徳的な話だろう、世の中そうは甘くないぞ」と思った記憶があります。不思議なものです。同じものを読んで、今は「自分のことばかり考えている人生を送っても徳はないな」と思うようになった自分があります。「百姓の足、坊さんの足」「花のき村と盗人たち」は本当に「心の純粋さ」っていいなと感じました。子どものころに感じてほしい感覚をむしろこの歳になって切々と感じるようになるというのは、やはり人生経験でしょうか。

今だから、読んで感じられる、そんな本のように思いました。長くなったので、一番好きだった「屁」と二番目に好きだった「狐」の話は止めておきましょう。読んでみたくなった方は、この機会に是非。出合いは縁です。

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