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エビデンス

先日行われた九州予防医学研究会で、「肺がんに対する(低線量)CT検診」の意義についての講演を聴きました。

今や、肺がんは胃がんを越えてがん死亡のトップになりました。CT検査は胸部レントゲンでは見つけられないような小さな肺がんを見つけ出すことができます。最近は肺の端の方のがんが増えていますが、これは症状がないためつい発見が遅れ、その点でもCT検査は有効だと思われます。うちの施設でも、肺がん検診としてのCT検査を受ける人は少なくありません。被曝のことを考えて通常のCT検査のときよりもかなり低い放射線量で撮影をします。

ところが、実はこの低線量CT検診は必ずしも肺がんの死亡率を低下させるかどうかはっきりしていないのです。この検査で1~2cm程度の小さながんを早く見つけ出したとしても、統計学的には受けなかった人と死亡率に差がないというのです。なのに、病気でもないのに放射線を浴びて被曝するのは、デメリットだけしかない可能性も否定できません。だから、人間ドックなどで肺CT検査をするときは、「必ずしも死亡率を下げないことや被曝することで健康を害する可能性もあることをきちんと説明した上で、それでも受けると云う人にだけこの検査をしなさい!」と国のお役人はうるさくそう云っています。

2年ほど前、国立がんセンターの呼吸器外科の先生の講義を受けました。彼は、「肺がんで死なない唯一の方法は、『タバコを吸わずに年1回肺CT検査を受けること』のみ」と云い切りました。つまり、確率論から云えば肺CTは決め手がない。でも一人の人間が生きようと思ったとき肺CTしか確実なことはない、とこういうことです。自分ならどうするか?自分で選択するしかありません。

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