数自慢
先日、久々に自分のお腹の傷口をながめて「昔、十何針縫ったんだ!」と傷口自慢をしているオヤジさんをみました。昔ほどではありませんが、今でもそんな数自慢が好きな人は少なくありません。どうしてそんなに数にこだわるのでしょうか?
健診の説明をしていても、「胃にできたポリープの数が去年は○個と云われた」とか、「腎臓ののう胞の数」とか「腎結石の数」とか、みなさんよく覚えておられます。
でも、それはたぶんほとんどの場合あまり意味はありません。たとえば5cmの傷口を縫うとして(その傷の深さや場所にもよりますが)、緊急で外科医が縫うなら6,7針かもしれませんし、形成外科医が小さく縫えば15針もするかもしれません。大ざっぱに乱暴な云い方をすれば、同じ大きさの傷でも何針縫うかは担当した執刀医の気分と性格の問題でしかない可能性も大いにあります。
胃のポリープの大部分は良性ですしヒダの間に隠れたら見えません。腹部エコーはただの影を見る検査だからあってもなくても見えないことはよくあります。要するに、検査した人はそのとき見えた数を伝えているだけですから、伝える人(医療者)は伝えられる人にそれほど重要な意味を持って伝えているわけではありません。たしかに大腸ポリープは大きさが悪性度の指標になります。でもたとえば「去年は3mmだったけど今年は4mmと云われたから心配だ」という人は取り越し苦労です。なぜなら、検査中にポリープの横にノギスか定規を当てて計測しているわけではないのですから、あの数字は施行医の単なる経験的な目分量です。・・・ことカラダの健康に関わる数字の場合は、意味のあるモノと意味のないモノが歴然とあることをしっかり知っておいたほうがいいと思います。
まあ、前述の大きなメタボ腹の傷口をポンポン叩いていたオヤジさんは、ただ「大怪我だった」ということを自慢したかったのでしょうから、笑顔で聞いてあげました。
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