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田舎の裏庭

先日、友人とトイレの話になりました。

わたしの田舎(父の実家)の便所は家の一番奥、縁側の廊下をミシミシいわせて歩いていったその果てにあり、手洗いの水は便所前の軒下に懸かったジョウロのような容器に入っていました。幼稚園に上がるまで農繁期にはいつもばあちゃんに連れられて田舎に滞在していたわたしは、あの忌まわしい薄暗い空間がお化け屋敷のように恐怖でした。

最終目的地(便所)は、家の中の北のはずれの裏庭に面したところにありました。「何もおらぁせん!なんか、男ん子やろうが!」と本家の兄ちゃんに笑われ、今にも泣き出しそうな決死の覚悟で闇の中に突入するのでした。昼間でも薄暗くて気味が悪いのに、夜はさらに凛とした漆黒の闇が裏庭の向こう側に待ちかまえていました。生け垣の向こう側に延々と広がる田圃や林からは虫たちの声、さらにその向こう側にある沼や川のせせらぎの音も聞こえていたはずですが、きっと当時のわたしには何も聞こえなかったはずです。もはや天も地もない暗闇の中を前だけをみてスローモーションで駆け抜けていく自分がいます。便器の下から手が出てきてわたしの足を握るかもしれないから夜にウンコに行ってはいけない。後ろを振り向いたらそこに何かが立っているかもしれないから、終わったらそのまま振り向かずに後ずさりし、音を立てずにドアを閉めてから一目散で走って帰るのです。でも、この行動計画の最大のネックは、軒下の水。これでどうしても手を洗わないといけないのかしら。子どもながらに何回そう思ったことでしょう。きっと裏庭の闇の中から無数の妖怪たちがこっちをみているのです。こんなところで、無防備にひとりで立っていては彼らに見つかってしまうではないか!

やっとの思いで明るいこの世に戻ってみたらみんながこっちをみて笑っています。そっと大きなため息をつきました。・・・こんな夢を、この歳になってもときどき見ることがあります。疲れているのかしら。

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