死をみつめる。(後編)
「硬直した死体に触るのは嫌じゃなかったですか?」と質問する看護師に「あなただって、さっきこの死体を処置なさったのでしょう?」と逆に聞いたら、「だって、さっきはまだ温かくて柔らかかったもの」と答えた、という下りもとても面白いと思いました。
患者さんが壮絶な戦いの末に<死>を迎えたとき、病院であれば最初にそれに直接接するのは多くの場合看護師さんです。エンジェルセットを持って、死後の処置をします。その段階では、目の前にいるのはさっきまで生きていた患者さんなのでしょう。でも、霊安室に移り、そこから葬儀屋さんや納棺夫さんの手にわたる頃には、それは<死体>になっています。
一体、<死>が<死体>に変わっていく境界線はどこにあるのでしょうか?看護師さんたちはそれをカラダが固くなってきたかどうかで感じているようですが、その前に魂が抜けていく瞬間をきっと彼女たちは体感として感じているのではないかと思うのです。科学的でないそんな感覚がだんだんとマヒしていくのが救急医療の現場なのかもしれませんが、<死者>を<生>の時から連続で見守っていてあげられる唯一の存在が彼女たち(家族は<生>→<死>の間に空白時間がある)なのですから、是非とも自分の感性を大事にしてしっかりと魂と会話してあげてほしいと願っています。
話がいつの間にか横道にそれました。
『<死>は医者が見つめ、<死体>は葬儀屋が見つめ、<死者>は愛する人が見つめ、僧侶は<死も死体も死者も>なるべく見ないようにして、お布施を数えている。』
・・・やっぱりこの人は詩人だ。
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