幸せってなんだ?
「ばぁかおまえ、これはもの凄く良いヤツなんぞ!」
わたしの父は、そう云っていつも誇らしげでした。ランドセルに始まり、木琴や書道の道具や技術家庭の道具や・・・同級生たちと同じものを持たせてもらえませんでした。小学校に上がるときに買ってもらったランドセルは何かの高級皮製だとかで柔らかくてペッチャンコでシワシワでした。友だちのランドセルは固くて大きくてテカテカ光っていて、テレビのCMで見るのと同じでとても羨ましかったのを覚えています。「あれは安モンの偽モンぞ。おまえのは本物ぞ。」・・・わたしが不満をいうと、父は必ずそう云っていました。
そうじゃないんです。高級品かどうかより友だちと同じものがほしかったんです。学校で安く一括購入する木琴や書道具を大部分の同級生は使っていました。先生もそれの使い方を基本にして指導しました。学校に行くときに一人だけ皆と違うものを持っていくのはシャイなわたしにはとても辛かったのです。
先日、渡辺淳一氏の「鈍感力」の講演の中で、似たような話がありました。ある日、渡辺氏は二十数名の仲間と一緒に一泊二日のゴルフツアーに行きました。夜泊まった旅館の食事でみんなが腹を壊したのに、ただ一人腹を壊さなかった男がいたそうです。彼が渡辺氏にそっと聞きました。「なぜわたしは腹を壊さなかったのか?」・・・それに対して、「それは分からないけれど、君の腹は細菌なんかよりずっと強かったということなんだから、自慢してもいいんじゃないか?」と答えたら、「わたしもみんなと同じ様に腹を壊したかった」と彼はつぶやいたと云うのです。
「分からないものです。幸せってなんなんでしょうね?」と渡辺氏は話を〆ました。でもわたしは、そのただ一人腹を壊さなかった彼の気持ちがとても良く理解できます。
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