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ゆるせない(前編)

わたしが産業医をしている企業のある若者がうつ病になりました。就職後、上司の厳しい指導についていこうとするうちに体調がおかしくなり、動悸がひどくなって仕事に行けなくなりました。とうとう彼は病院を受診し、「うつ病」の診断書とともに休職しました。そんな彼が数ヶ月前に復職しました。それなりに順調に回復し、現場復帰できています。

産業医として関わっているわたしは、先日彼とゆっくり話をしました。一通り彼の思いや近況を話してもらったあと、「もう言い残したことはないの?」と聞いたら、しばらく口ごもったあと、やっと重い口を開けました。

「自分がこんな形で復職できたことはとても幸せで有り難いことです。でも、たとえどんなに反省してもらったとしても、やはり、自分をこんな身体にし人生をボロボロにさせた上司が、何のペナルティも受けないことに納得がいかない自分があります。彼のやったことは「いじめ」であり、同じことが行われて自分と同じような目に遭う若者がこれからも出るとしたらそれは「犯罪」ではないかと思うと、どうしても彼を許せないのです。」・・・ずっと静かに穏やかだった彼の顔色が蒼白になり急に涙をボロボロ流し始めました。

明らかな感情失禁状態なので、その話はそこで終わることにしました。

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