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自分の生き方

林田正光氏は48歳で胆管狭窄症に黄疸を併発し、治療に時間がかかったために、前に勤務していたホテルでずっと築き上げていた地位を剥奪されました。大学も出ず英語もパソコンも得意でない彼は、「世の中ってそういうものだと割り切ることができた」と云います。でもそれは諦めでもへこたれでもなかったのです。彼には叩き上げのホテルマンとして顧客サービスをていねいにやってきた自信がありました。それが彼のその後を決めたのだと思います。

何年か前、当時の上司がわたしに云ったことばはショックでした。「わたしは、キミが今以上の役職につけるように推薦することができない。なぜなら、キミには何の肩書きも専門医資格もないからだ。今の病院のトップは、まず客観的な肩書きを評価基準として求めるようになったのだ。」・・・「それではしょうがないですね。」と笑いながら部屋を後にしましたが、その日の自分の行動をあまりよく覚えていません。わたしが若かったころ、「つまらぬ肩書きや地位ではなく、いかに切磋琢磨して患者治療に取り組んだかが評価されるべきだ!他でどれだけ偉かったかなど意味のないことだ!」と云い切った病院トップの意気込みに「ここは凄いところだなあ」と感動したことを、なつかしく思い出していました。

その後、意外にもろかったわたしのこころとカラダは、ご他聞にもれず不眠症からうつ病へ、胃潰瘍や円形脱毛症やと起しました。自分はこの組織に必要な存在なのか?自分はここにいる意義があるのか?夜中まで考え込んでいたそんなころ、ふっと「自分は何のために医者になったのか?」を思いました。「そうだった。自分はただ患者さんを良くしたいと思ったから医者になった。わたしほど患者さんのこころを代弁しようとする医者はそうはいなかったはず。・・・組織の管理者なんかにならないで済む分、自分のやりたかった医療をこれからも好きにやれるのではないか?それはラッキーなことではないか?どうせ道が限られているのなら、怖いものはないから気兼ねなくやらせてもらおうか。」

とても楽になりました。もちろん今でも周期的にうつの嵐がやってきます。それでも、昔よりずっと余裕のある人生を送れているような気がしています。

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