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断らない救急

開業前のリッツ・カールトン大阪に営業支配人として採用され、その後営業総括支配人になった林田正光氏のくだりも好きです。林田氏は、今もそのころの経験を生かして全国を飛び回って活躍しているそうです。

ホテルの評価が上がると満室のことが多くなる。お客様の予約を受けられないとき、「あいにくご予約は一杯でございます」といって切るのでは普通のホテルであり、彼は、「私どものホテルは一杯ですが、明日のご予約ですから、もしお困りでしたら、近くの同ランクのホテルの空き状況と料金を調べてご連絡いたします。いかがしましょうか。よろしければ、私どものほうでご予約の手配もさせていただきます。同業ですので割引できないかも伺ってみます」と答えるようにしているといいます。

何もそこまでする必要はないだろう、と思いますか?彼のモットウである「NOといわないホスピタリティ」を常に念頭に置き、実践していたヒトを他にも知っています。わたしを今の職場に引っ張ってきてくれたわたしの恩師です。「断らない救急」をモットウに、救急患者依頼の電話はどんなものでも必ず受けなさいと云われました。今ではめずらしくありませんが、20数年前の異端児の発想は、病院の中でもかなりの軋轢がありました。今は「断らない救急」の申し子のような顔をしている病院管理者の先生方も当時は「スタンドプレイだ!」と云って目くじら立てて反対していました。「相手の先生は困っている。助けを求めている。それを門前払いするな。それがたとえ心臓に関係なかったり大したものじゃなかったとしても良いじゃないか。それは患者さんにとってはありがたいことだ。紹介してくれた先生に恥をかかすな。すべてを受けることで信用が生まれる。困ったときには頼りになる病院として、先生にも患者さんにも信頼のつながりが出来るんだ」~それが彼の口癖でした。そうやって評判があがると、とうとうベッドが足りなくなってきました。急性心筋梗塞を始め、循環器救急の病気はどれも命に関わる重大なものばかりですから時間との勝負です。うちに空きがないから、と断るわけにはいきません。わたしたちは、近くの心臓救急を行っている病院に連絡を取りました。わたし自身、病院のドクターカーで患者さんを迎えに行き、それをまだ余裕のあった大学病院に連れて行ったこともあります。今はたくさんの高度医療をする病院ができましたからそんなことはなくなりましたが、信用と信頼というものはそんなこころからやっと生まれてくるものなのだということを、わたしは今は亡き恩師からそのときに教わりました。

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