NIPPON DATA
第50回日本人間ドック学会の特別講演では、もうひとつ「NIPPON DATA」のお話もありました(上島弘嗣先生)。
NIPPON DATAとは、National Intergrated Project for Prospective Observation of Non- communicable Disease And its Trends in the Agedの略で、厚労省の命を受けて2回だけ(もともと1回だけの予定だったそうですが)行われた(NIPPON DATA80と90)コホート研究です。でも意外に知られていないのではないでしょうか。循環器疾患に関する疫学的な研究ですが、「そんなこと当たり前」と思われていたことについて、実はきちんと日本人で証明されたデータがないものがたくさんあったのです。そんな「当たり前」のことを、日本人でも「当たり前」に間違いない、という証明をしたものなのです。
これは地味な仕事ですが、とても大切なことです。たばこは本当に心臓や血管に悪いのか?高コレステロール血症は本当に心筋梗塞や狭心症を起しやすいのか?・・・NIPPON DATAの結果があるからこそ、健康に対する指導をする場合も、あるいはクスリを処方する場合も、しっかりとした根拠を示すことができるようになったといえます。
出てきたデータは莫大です。その結果に対してきちんとした考察を加えなければならない、ということを上島先生は強調されました。例えば、「禁酒した人は死亡率が高い!~酒をやめない人より酒をやめた人の方が多く死ぬ!」という結果があります。これは、やめなければならないくらい重症な人が禁酒した群に多かっただけかもしれない、ということだったりします。あるいは、「タバコを吸う人は吸わない人より3.5年も早死にする」というデータは、「なんだ高々3.5年しか縮まらないのなら吸っててもいいか」という喫煙継続の根拠になったりするものです。
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