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残された人生

「夫は、去年の12月26日に亡くなりました。」

毎年、寄り添うようにして人間ドックを受診してくれるある開業医のご夫婦がおられましたが、今年は奥様だけが受診されました。やつれきった奥様の姿が、この半年間いかに大変だったかを物語っていました。個人開業の院長が亡くなったのですから、最愛の夫を亡くしたことに打ちひしがれている余裕はありません。今まで何も知らなかった膨大な事務処理のために不眠不休の日々を送ったのだと、受診結果の説明の時間に切々と語ってくれました。

「何しろ、いつも一緒でした。しかも毎月のように二人で山に登りました。お正月は外国の山に二人で行くのが決まりでした。彼はいつもタフで、しかもとても物知りで心から尊敬できる人した。・・・だから、一人残されて途方に暮れています。それでも感傷に浸るヒマもありませんでした。地獄のような日々でした・・・。」

頼もしい伴侶にすっかり頼り切っていたこれまでの人生が伺えます。そして一人残りました。一人で山歩きをする気にもなれず、食べたくもない食事を無理矢理口に押し込んでいいる日々だったと云います。

幸い、健診結果はほとんど問題ありませんでした。軽い弁膜症も耐糖能異常も昔と変わっていませんでした。彼女もその結果を聞いて、ちょっとニコッとしました。でも、彼女の人生はこれからなのだと思います。やっとすべての処理が一段落した今、急に気が抜けて何をする気力も湧かなくなるかもしれません。喪失感と不安感はこれから押し寄せてくるのかもしれません。わたしたちは相談をしました。「もう一度だんなさんと歩いた思い出の山に登ることにしませんか。でも、今の体力ではムリです。来年の春に登ることを目標にして、これから少しずつ体力をつけましょう。」・・・これからは、すべて自分の力で生きていく人生ですが、きっとだんなさんが見守ってくれるから大丈夫です。来年、いい知らせをお待ちしていますね。・・・そう云って別れました。

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