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芸術家と職人

東京に居たころ、妻が通っていた新大久保のステンドグラス教室では、とても繊細な小さなパーツと小さなノリしろ(というのかしら)でとても細かい作品を作っていました。熊本に帰ってきて、自宅近くにあったステンドグラス教室に行き始めたら、作風がガラッと変わりました。のりしろも大きいしパーツも大小さまざま。結果として大味だけれどダイナミックな作品が増えてきました。「そんな細かいことにこだわっててもしょうがないよ」とその教室の女先生は豪快に笑っていたと聞きます。

「まあ、性格だけじゃなくて、同じような芸術作品でも、職人としてこなすか、芸術家にこだわるか、その差が出てくるんだと思う」と云うのが妻の分析でした。どっちが職人で、どっちが芸術家なのか良く分からないといえば分からないのですが・・・何となく<言い得て妙>という感じで聞いていました。わたしは、相手が満足できる仕事をする(作品を作り上げる)人が「職人」で、まず自分が満足できる仕事をする(作品を作る)人が「芸術家」だと区別しています。

そう考えると、医療の場はまさしく職人の集まりです。うちの病院のような高度先進医療を積極的に追求している現場では、<ゴッドハンド>のような名人芸の医者はたくさんいます。患者さんの命を救うという作業をするのですから、「職人の中の職人」といえるでしょう。それなのに、現場はとかく自分の満足を満たそうとしすぎているのではないか、ということが問題になりました。患者さんにとって、そこまでする必要性はないと思えるところまで手を出しているというのです。そういう反省から、現在ではそこに病変があっても臓器に大きな影響を受けない限り簡単には手を出さない、という考え方が主流になっています。

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