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2009年11月

肺炎球菌ワクチン

インフルエンザにインフルエンザワクチンがあるように、重症の肺感染症や髄膜炎の原因になる肺炎球菌感染を予防するために作られたのが肺炎球菌ワクチンですが、多くのひとがその存在を知らないでしょう?一度接種すると5年間効果が持続するのだそうですが、日本の摂取率は5%(アメリカでは65~70%)なのだそうです。ところが今、新型インフルの流行のために、この肺炎球菌ワクチンが品切れになったとも聞きました。そんな中で、2つの大きなニュースがリリースされています。

●成人向け(2歳以上)肺炎球菌ワクチンの再接種許可(2009.10.18)

万有製薬が製造販売している23価ワクチン(ニューモバックスNP)は、接種して5年以上経過すると徐々に効かなくなるのですが、2回目以降の接種で皮膚反応が強くなるために日本では再接種を薦めていませんでした。それが条件付きで認められました。再接種の対象者は、重症化するリスクの高い65歳以上の高齢者や基礎疾患(心臓病や糖尿病など)を持つ患者で、初回接種から5年以上経過しているひとたちだそうです。

小児用(2歳未満)肺炎球菌ワクチンを承認(2009.10.16)

一方、欧米で使われている小児向け7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7,プレベナー:製造販売元ワイス社)が厚労症の承認を受け、やっと来春から発売されることになったのだそうです。肺炎球菌感染症で重要なのはやはり細菌性髄膜炎。その原因になるインフルエンザ菌b型のワクチンと肺炎球菌ワクチンを合わせて接種すると、髄膜炎にはほとんどなりにくいことになります。

残念ながらまだまだ値段がとても高いのがネックなのだそうです。それにしてもこんなにたくさんの予防接種をまとめて打ってもカラダは大丈夫なものなのでしょうかしら。予防接種のたびに抗アレルギー剤を飲んでいるうちの妻を見ているのでなんか不思議であり、心配でもあります。

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機関銃

午後からの結果説明を前に、フロアに数名の受診者の方々が集められて保健師のオリエンテーションが始まりました。今日の保健師さん、えらい張り切っている様子で、まるで機関銃のように早口です。「やっぱり、ちょっと早すぎないかな?」・・・歯切れがよいといえばよいのですが、追い立てるように発せられることばの多さが傍で聞きながら少々気になってきました。きっとあのフロアで聞いている方々の多くは聞くことを放棄して聞き流しているんだろうな、と感じました。

耳を澄ますと今度は隣のレントゲン室からも大声で元気な声が聞こえてきました。こっちもまた異常に早口です。横で聞く限り、何と云っているか半分くらいしか聴き取れない気がするのは、わたしが熊本出身者ではないからでしょうか?

毎日大量の受診者を相手にし、大量の情報を短時間で伝えなければならないと思うと、どうしてもこうなるのでしょう。毎日同じことを同じ時間内に話すとき、口が勝手に仕事をしているだけで、きっと頭は何も働いていないだろうということは以前にも書きました。かく云うわたしも実は同類です。話ながら、「あ~早口になっている。相手が聞き流し始めた~!」と分かるのだけれど、もうそうなると簡単には修正できません。

学生時代、演劇部にいました。同じ量の台詞があって、それを早口にしゃべっても、ゆっくりきちんと話しても、かかる時間はほとんど差がないんだぞ、とよく演出家からダメだしされたものです。わたしの隣の説明室から、ゆっくりと優しいポツポツトしたリズムの声が聞こえてきました。同僚の説明の声です。あれで本当にわたしと同じ量の情報を伝えられているのだろうか?と疑いたくなるのですが、よく考えたら、早口のわたしが発する情報の半分以上は聞き流されているのだから、結果としては同僚の発する情報量の方が多かったりするのかもしれません。

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偉いよね。

我が家の食卓の横にあるケージの中で、やっと1歳になったばかりの愛犬が、夜遅くになって急にえさを食べ始めました。ドッグフードを、カリカリと、それはそれはとてもおいしそうに食べました。

彼女は、食べたくないときには目の前のえさを食べません。一日に2回のごはんの時間にいつもの量を食器に入れて与えても、食べたくないときにはほとんど口にしません。「食が細い」ということばで片付けていましたが、何か違うみたいです。気まぐれに時々ダラダラと食べるのとはちょっと違うのです。彼女は、自分の空腹感がきちんと一定線レベルに達しないと食べ物を食べないようなのです。だから、何かのきっかけがある様子でもなく、ある時突然スイッチが入ると、ずっと放ったらかしておいたフードを食べ始めて一気に全部を食べ終わるのが常です。

「本能は、暴走しない。分をわきまえている。足るを知っている。多過ぎれば自主的に減らそうとする節度を持っている。暴走するのは、知性の方なのだ。本能が知らせてくれる実際の食欲を超えて食べ過ぎようとする衝動は、私たちの知性が引き起こしているものだ。コントロールされなければならないのは、実は本能ではなくて知性の方なのである。・・・・」~奇しくも、今ちょうど読んでいる「知的アンチダイエット生活」(夏目祭子・新潮社)に書かれていたこの一節を、彼女はきちんと実践しているように思いました。

「あんたは偉いなあ。わたしなんか、腹が減ってなくても目の前に食べ物が並んでいたら絶対食べるのになあ。そして食べすぎて苦しくてウンウン唸るのになあ。」・・・犬らしくない彼女の行動を見ながら、戌年生まれのわたしは、ちょっと反省をした次第です。

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「星の王子さま」に思う

以前(2009.10.16)話題にした「星の王子さま」(サン=テグジュペリ)を手に入れたので、早速読んでみました。

いろいろな星に行く話、キツネの話、ヘビの話・・・いろいろを一気に読み上げながら、刹那刹那に同感し感動し、こんな凝り固まった頭の滑稽なおとなたちは現代社会にはたくさんいるよねなどと思いました。せっかく読んだのだから感じたことを書いてみたいとも思いましたがやめました。何か、一回読んだだけではまだ何も書けない気がしたのです。もっと何度も読んでみたい気持ちが先にたつのです。わたしは本を読むときに、ページの端を折るクセがあります。読んでいるときの自分に何かがシンクロしたときに素直に印をつけるのです。「星の王子さま」にも1ページだけそんな折り痕がありました。今になって何度も読み返してみましたが、なぜそこを折ったのか理解できませんでした。だから、もう一度(あるいはもっと何度も)最初から読み直してみたいと思うのです。本を読んでこんな感情になったのは初めてかもしれません。

わたしが「星の王子さま」を読んだという話をいろいろな人にしました。皆さんの反応は全部同じでした。「なんで、今さらあんな話を?」・・・そう云われる度に「こんなに感動できる話なのになんでそんなことを云うの?」と思いました。「きっとあなたが読んだのがもっと子どものころだったからだよ。幼すぎてあまり理解できなかったか、逆に純粋な子どもの頭ではあまりに当たり前の話だったか・・・。ただの空想の絵本じゃないよ。大人になった今読むと、とても深い話だということがわかると思うよ。」・・・そう云ってあげたい気持ちになりました。

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プライドを砕くごとし

「何やってんだよ!」「おまえは給料泥棒か!」・・・若いころ、とんがりまくっていたわたしはよく仕事中に吠えていました。

それは当たり前だろう!だって、きちんと仕事をしていないのだから・・・。救急の現場で、気を抜いたことをしていたら直接命に関わる事態を起しかねないのだから・・・。怒りを露(あらわ)にして吐き捨てたあと、わたしはイライラしながらその場を立ち去るのでした。たしかに注意を受けた方が悪いのかもしれません。ちゃんとやるべきことをやっていないから叱られてもしょうがないのかもしれません。でも、たとえ自分の過ちを棚に上げたとしても、彼らがこれを<ハラスメント>と感じた時点から、これは<いじめ>になるのです。この思いの違いが大きな壁になって、問題を大きくさせるのだということに、やっと最近気付いてきました。

それは、<正義>という名を楯にして、相手の<プライド>をズタズタに砕く作業なのです。怒りまくって去っていったわたしと、言い訳もさせてもらえないままにカラダもココロもひとり取り残されてしまう相手と、そのどちらにも何も良いことはない殺伐とした空間が出来るのです。

いま、いろいろな組織の中で、若いリーダーがちょうど昔の私のような厳しい態度をスタッフに向かってしているのを傍から眺めながら、そんなプライドを砕く仕打ちが本当に良かったのだろうか?と、自分の過去に自問自答している今日この頃です。

「相手に逃げ道を作ってあげてほしい」・・・わたしの尊敬する元ボスがそう云っていた意味が、本当に分かるようになってきました。

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「こころの耳」

わたしの職場に定期的に来ていただいている臨床心理士の先生から、あるポータルサイトを紹介してもらいました。

こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp/index.html):厚生労働省・産業医学振興財団から出されている、働く人のメンタルケアサポートサイトです。

仕事は大事だけれど、
いちばん大事なことではない。
いちばん大事なのは、
あなたのいのちです。

-心の健康確保と自殺や過労死などの予防-という副題がついています。一通り見てみました。悩みを持って働く人本人に対して、それを見守っている家族に対して、あるいは会社の上司や同僚・事業主に対して、そして私たちのような産業医や支援者に対して、と各々の立場に合わせて検索しやすいように作られています。電話などで相談したいときに相談できる連絡先が紹介されていたりします。まあ、お上の作ったポータルサイトなのでちょっとお堅いところもありますし、実際に悩んでいる人にとってどの程度頼りになるかはわたしには想像できませんが、でも何か次のステップにつなげることができるかもしれません。

「自殺は、個人の意志による選択と考えられがちで、特にわが国ではその傾向が強い。しかし、実際には『追い詰められた末の死』であることが多く、WHOは『避けることのできる死』と位置づけている。」・・・ある医療情報誌の中に書かれていた一節です。

今、何かを悩んでいる方や、周りで悩んでいる人を知っている方は、是非このサイトを覗いてみてください。ヒントが隠れているかもしれません。

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あ~腹減った!(続編)

ここ数週間頑張ってきたわたしのダイエット作戦はそれなりに功を奏しました。

今回のダイエット法に対して、「あ~腹減った!作戦」と名づけることにしました。とにかく、すっかり「腹が減った」という状態になるまで食べないでいるやり方です。本当に「腹が減った」という状態をきちんと経験した後にモノを食べると、意外にも、ほんの数口で腹は満足して満たされてしまうものだと分かりました。満足するまでにもっと大量の食べ物がいると思い込んでいたのは間違いだったことに気付きました。目の前に大量の食べ物を並べてしまうと、食えなかった分を取り戻さなければ、と真面目なアタマが早合点して、ガサガサと口の中に放り込んでしまう。「食べる」という行為とは程遠いことをやってしまうから、「食事を抜くと太る」と云われるのでしょう。

カラダが<空腹感>を実感した後に軽く盛られたおかずを口に入れると、<食べること>の喜びを感じることができます。どんなものでも「おいしい!」と感じます。噛めば噛むほどおいしさが口中に広がってきます。この満足感が感じられるとしめたものです。<「満腹感」と「満足感」は違う>を実感できる瞬間です。

先日も書いたように、「小腹が空いた」状態でモノを食べてしまっては元の木阿弥です。この状態でなにか一口食べてしまうと逆に食欲に火が付いてしまうようで、<似非飢餓状態>を作ってしまいます。皆さんが陥っている失敗でしょう。

やせる、やせないの問題は別にして、是非一度「腹が減ったぁ~~~」状態を経験してみてください。そしてその後で、食べることの有難さと喜びを噛み締めながら味わって食べてみてください。とても得した気分になれます。

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電子タバコに注意

電子タバコは画期的だ!ということを以前書きました(2009.2.20「電子タバコ」)。専用カートリッジにニコチンなどを含む液体を入れて噴霧しながら吸い込むので、一酸化炭素やタールなどの発ガン性物質が含まれないのが特徴だからです。また、間接喫煙の元になる副流煙も出ません(出るのは水蒸気のみ)し、ニコチン量を減らしていくと禁煙支援グッズにもなれるのです。

ところが、先日、アメリカ食品医薬局(FDA)から警告が出ました。よく不凍液として用いられるジエチレングリコールなどの発ガン性物質やその他の有害化学物質が、電子タバコのサンプルから検出されたというのです。その量は定かではありませんが、そうなると手放しで「優れもの」とは云えなくなってしまいました。特定保健用食品だったエコナの発ガン性物質騒動もそうですが、自然界に存在しないモノを作り出すと、現代社会ではどうしてもどこかで無理をさせてしまうのが必定なのでしょうか。まあ、電子タバコを楽しんでいる皆さまは、この情報もしっかりと理解した上でお使いください。

そういえば、前回の「電子タバコ」の記事でお書きした社長さんですが、先日久々にゴルフをご一緒したら、何事もなかったかのように普通にタバコを吸っていました。わざわざ電子タバコの話題を振るような無粋なことはしませんでしたが、やっぱりアレでは物足りなかったのでしょうか。・・・まあ、その気になったらまた使ってみることもあるのかもしれませんね。

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優れた人

医療人として「優れた人」とは、どういうひとのことを云うのだろう?

そんなことを考えたことはありますか?わたしの勤務する病院は、全国的にも名を馳せている救急病院です。わたしの尊敬する元ボスは(彼に限らず、うちの病院の管理者の多くは)、救急現場でテキパキと動ける人間こそが「一番優れた医療人だ」と良く云っていました。それは逆に、救急現場で何もできずにアタフタするだけ、あるいは立ちつくして邪魔をする人間は「できない人間」というレッテルを貼っているようなものです。先日退職された前部長もまた、そんな基準でスタッフを評価していましたので、彼が一度×の評価をした人が名誉挽回するのは並大抵なことではありませんでした。

でも本当は、救急で本領発揮できなくても、患者さんのこころを代弁し、患者さんの立場に立った医療ができるスタッフはたくさん居ます。救急現場で機械的に東奔西走している人よりはるかに立派だなと思えることはめずらしくありませんので、きっと「優れた医療人」という定義は別にあるのだろうと思っています。

一方、医療現場にいると、「優れた医療人=優れた人間」という錯覚を持つことがあります。医療スタッフ同士だけではなく、たとえば患者さんの立場でナースを見たりしたとき、そんな判定をしてしまうことはありませんか?学生のころ、ある公立病院の麻酔科の研修に行ったときに、そこの部長がわたしたちに釘を刺しました。「オペ室のナースはみんな優秀だけど、マスク越しに恋をしてはいけないよ。彼女たちは、仕事の顔とプライベートの顔は別だからね。」・・・プライベートがダメと云いたいのではなく、仕事のプロとはそういうもので、本来の性格を仕事の顔に反映しているとは限らない、ということだと思います。人間として好きになりたかったら、プライベートの姿で判断しなさい、と。

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中古車の扱い

我が家の自家用車は乗り始めて丸8年になりました。走行距離は9万キロ・・・それなりの距離だと思います。それなりに故障もし、小さい事故にも何度か遭遇させながらも、それなりに調子よく動いてくれています。

先日、カラダの中のいろいろな症状が気になる、という男性が受診されました。まだ40歳になっていませんが、膝が痛い、手がしびれる、頭痛がする、動悸がする、耳鳴りがする・・・などが周期的に起きるのだそうです。それぞれにあちこちの病院を受診され、特に問題がないことを告げられて一旦安心はするのですが、また次の症状が出始めると気になり始めるようです。

彼とずっと話をしながら、結局「カラダの衰え」をどこかの時点で受け入れなければならないのだということを思いました。最初にピカピカの新車で我が家にやってきたわたしの愛車も今は中古車です。新しい車として手入れし、傷が付けば修理をし、新車の装いを保ち続けようとしましたが、長い年月には勝てません。いつの間にか色あせ、水垢は取れなくなりました。ダッシュボードの蓋が壊れ、デジタル表示の掲示板の電気が切れて一部見えません。でもとても愛着があり、とても健気にわたしを運んでくれます。何ら問題はありません。新車の時には新車の扱いがあり、中古車になったら中古車としての扱いがあります。少しガタが来たカラダを「そんなもんだ」と思えるようになってしまえば、小さな諸症状は気にならなくなるものです。その「諦め」の分岐点さえ越えられれば、今よりはるかに楽になるのになあと思いながら、同時に、「そう簡単にはいかないんだな」ということも、自分の人生を振り返りながら思うのであります。

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強いくすり

「くすりを飲み始めたら止められないというので、飲まない方がいいと思って・・・」

なんと、昨日3回も同じことを聞かれたのでお書きします。本当にくすりを飲みたくない理由がそれだとしたら、愚の骨頂です。「飲み始めたら止められない」人は、早く飲まないと危ない人です。「止められる」人は、早くからちゃんと飲み始めて治療がうまくいった人です。遅くに始めて「止められる」人はたぶん誰もいないでしょう。もちろん、ギリギリまで引っ張って「もうダメ!」というレベルから飲み始めたのなら止められるはずはなく、むしろかなり濃厚なくすりの使い方を余儀なくされます。飲む必要のないときに飲まなくてもいいけれど、飲むべきときを逸しないようにするのが、毒物である「くすり」のつき合い方の基本だと思います。

さて、高血圧のくすりなどで、よく「これは割と軽いくすりです」とか「強いくすりです」とか云います。「最近くすりを飲み始めました。先生が『これは一番軽いくすりです』というので飲んでみています」という人がいます。もちろん先生が本当にそう云ったのだと思いますが、でも最近はこの考え方はあまりしなくなりました。「強いくすり」はあまり存在しなくなったのです(もちろん何をもって「強い」というのかは分かりませんが)。急激に血圧を下げることはあまり良いことではないということが分かってきました。だから血圧はゆっくりと下げたり、血圧を下げること自体よりも動脈硬化を改善させたり腎機能や心機能を良くしたりする効果のあるくすりが現在の主流です。ある意味、最近はどのくすりも「軽いくすり」なのです。

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前立腺がんと前立腺肥大

わたしが医学生だったころ、「基本的には前立腺がんと前立腺肥大は両立しない」と教わりました。前立腺がんは男性ホルモンが起こすトラブルのひとつで、前立腺肥大は女性ホルモンのなせるワザだ!、と。だから、前立腺肥大になりやすい人は前立腺がんになりにくく、前立腺がんを起こすタイプの人は前立腺肥大になりにくいのだ、と教わった記憶があります。

これはある意味正解で、前立腺がんと前立腺肥大は基本的に別物です。だから、前立腺肥大ががん化するわけではないと考えられています。肝血管腫が肝臓がんになるわけではないのと同じです。前立腺肥大は前立腺の内側(内腺)から発生するからおしっこが出にくくなったり切れが悪くなったりするわけですが、前立腺がんは外側(外腺)から発生しやすいので進行するまで症状が出にくいというネックがあります。

話を戻しますが、むかしそう教わっていた(つもりな)のですが、どうも最近はそうでもないようです。前立腺肥大が強い人に前立腺がんができてくることもしばしばあるように思います。発生する場所が違う以上、単なる合併でしょうが、相対するホルモンの作用であることを考えると、現在は中性的な人が多いということなのかしら(たぶん違いますね)?最近おしっこの出方が明らかに悪くなったわたくしです。PSA検査共々、定期チェックは怠れません。

http://www.zenritsusen.jp/index.html

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PSA検診の是非

天皇陛下が前立腺がんを治療するきっかけになったことで一躍有名になったPSA(前立腺特異抗原)のことをご存知の方は多いでしょう。特に妙齢の男性は知らない人の方が少ないかもしれません。

「前立腺がん検診」としてのPSA検査の是非について、今、ホットな闘いが繰り広げられています。厚労省は検診(特に対策型検診=住民検診)におけるPSA検査は有効とは云えず勧められない、というスタンスであり、スクリーニングとして積極的に導入してがんの早期発見の武器とすべき、という泌尿器科学会と真っ向から対立する形です。
http://medical-today.seesaa.net/article/53542855.html
厚労省の結論は、ちょうど「肺CT検診で小さな肺がんを見つけ出したとしても、レントゲン検査でちょっと進んだ影を見つけてから治療したときと生存率に大きな差がない」という理論と似ています。つまり、住民健診でPSA検査をしても、統計学的に必ずしも前立腺がんの死亡率を減らすとは限らず、国民の税金の無駄遣いだ、というわけです。

PSAは前立腺特異抗原ですので、他の腫瘍マーカーと違って、正常値なら前立腺にがんはないとほぼ言い切れます。一方、前立腺炎や前立腺肥大でも上昇することがありますから、上昇しているからといって前立腺がんとは限りません。健診でPSAを測定するようになって「前立腺がん疑い」という診断で泌尿器科外来を受診するひとはかなり増えており、その後も定期的に外来通院をしているひとも少なくないはずです。だから「心配する必要のないひとに無駄な心配をさせている」という批判もありました。でも、わたしはPSA検査はとても良い検査だと思います。単なる採血でがんの有無をこれだけ明確に評価できる検査はそう多くはありません。少なくとも任意型健診(=人間ドックなど)ではPSA検査を受ける意義は大きいと考えています。

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性格

今年も哲学者たちの施設に健診に行きました。でも、今回は<軽症組>を担当したので、残念ながらいつもの哲学者の皆さんには会えませんでした。

代わりに、今回は施設の職員さんの健診も一緒にありました。 とっても大きな身体のひとりの女性が、ジャージの上着を脱いで腕まくりをしています。「さあ、いよいよ問題の腹囲測定ですよ~!がっはっはっ!」・・・若いのにとっても豪快な笑い声です。一方、同じような体型の女性がもうひとり、物静かに順番待ちをしていました。一番憂鬱な時間だと言わんばかりの浮かない顔をしています。

この二人の女性。性格なのでしょうが、まるで対照的な表情をしていました。健診をする立場からいえば、後者の方が痩せることに一生懸命になってくれるので指導しやすいかもしれませんし、もしかしたらいつも頑張っているけどうまくいかないことを気にしているのかもしれません。でもどうなのでしょう。毎日元気に施設利用者の皆さんと組んず解れずで戦いながらいつも笑っているであろう前者の女性の方が、良い人生なのじゃないのかしら、とつい思ってしまいます。何か、彼女が醸し出す雰囲気に、まるで病的な空気が漂って来ないのです。もちろんこのままでは10年、20年後に乳がんや子宮がんになりやすいし、睡眠時無呼吸を起こしやすいので、もう少し痩せるのに越したことはないのでしょうけれど、今はその元気さで動きまわっておけばいいのじゃないかしら。せっかくの元気印を大事にしてほしいな。・・・そんな印象を受けながら、遠くから眺めておりました。

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早食い

「わたしは早食いです。仕事柄どうしても早くなってしまいます。」

健診の結果説明をしているときに良く聞く言い訳です。でも、たぶん仕事が忙しいから早食いなのではなく、あるいは忙しい仕事の中の早食い習慣ができてしまったから日頃も早食いになったのではなく、それはそういう性格なのだと思います。”せっかち”というんでしょうか。

わたしは昼飯に5分ほどしか費やしません。もちろんわたしの弁当箱はとても小さく、両手でほとんど包み込める程度ですから大して量は入っていませんが、それでも5分は明らかに早食いです。でも、めしを食うことで昼休みが潰れることが、もったいなくてしょうがないのです。食事に費やす時間があったら他にしたいことがたくさんあって、それは仕事ではないので忙しいわけではないのですが・・・。

ですからもちろん、「早食いだから、あるいは、忙しいからモノを良く噛まない!」というのも間違いだと思っています。そういうひとは、ゆっくりと時間があってもどうせ噛まないでしょう。そういう習慣ではないのだから。以前ここで書いたことがあるような気がしますが、わたしは早食いの方が<良く噛める>ようになる方法を、いつも惜しげもなく伝授しています。簡単です。目の前にあるおかずとごはんを全部半分にすればよいのです。必ず噛みます。半分になると物足りないので必ず噛みます。これは、私自身のカラダで実験済みです。ウシのように、飲み込みかけたモノを吐き出してでも噛むようになります。どうぞ、お試しください。

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必要とされる。

昨日紹介した<鎌田實先生のインタビュー>の中に、

「東京に帰ろうと思ったことも何度もありました。でも、ある末期ガンのおじいちゃんに、『先生、東京に帰るって噂があるけど、俺を看取ってからにしてくれよ』って言われてね。すごく嬉しかったんですよ。自分を必要としてくれる人間がいるってことが。しょうがない、もう1年いるかって思ってるうちに35年経っちゃった。だからそんなに立派じゃないの。揺れて揺れての35年ですからね」という件(くだり)があります。

きっと医者冥利につきる話だと思います。わたしも、ある山奥の病院で「先生がまた来たってうわさを聞いたから久しぶりに来てみたよ!」と云ってくれた患者さんがいて嬉しかったことを思い出しました。でも同時に、当時のとても苦しかった想いも思い出してしまいました。当時のわたしは何度も地方の病院へ出向に出されていました。ほぼ半年ごとに、半年~1年の期間で出向くわけですから、自分の病院に勤務する期間より他の病院に勤務する期間の方がはるかに多くなりました。地方の病院で全人的な医療をやっていくことは自分に向いているなと感じていましたので、そのこと自体には何ら不満はありませんでしたが、ただ、引っかかることがありました。数多くいる同僚の中で私がそうやって出向医師によく抜擢された理由は、「他に行けるひとが居ないから」というだけのことでした。○先生と△先生はあの仕事があるから抜けられないし、●先生は今子どもさんが受験で大変だし・・・。「わかりました。確かにわたししかいませんね。」・・・優等生な笑顔の受け答えをしながら、「つまり、わたしはこの組織にとって必要不可欠な駒ではないということだな」という思いが、出向の度に強くなっていきました。それが前の部署を辞めた最大のきっかけになりましたし、そのころからわたしのウツ周期が始まりだしたのではなかったかという気がします。

まあ今はただの思い出ですが、誰にも胸のうちを明かすこともできずに地方病院の宿舎で悶々としていた時期のことを、つい思い出してしまいました。

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鎌田先生インタビュー

このブログ(ココログ)の編集画面の右上に「ココログからのお知らせ」という欄があります。ほとんど見たことのないスペースですが、記事を書いていると、どうも視界の片隅に見覚えのある文字が・・・「医者・作家 鎌田實さんのスペシャルインタビュー前編公開です!」・・・なに?わたしの尊敬するあの鎌田實先生のことかい?これは大切です!早速拝見いたしました。

Special インタビュー <できることをやればいい>鎌田實さん
http://celeb.cocolog-nifty.com/interview/2009/11/vol80-559f.html

<できることをやればいい>・・・この肩肘張らないスタンスが、彼の人生を支えた基本なんだと思いますが、でもそれは彼だからできたことなのかもしれない。そんな気がします。 でも・・・みなさんに是非読んでいただきたく、あえて今日はこれを写しました。

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「景気が悪いとか、会社の業績が悪いとか、大企業に入れなかったとか、それでダメかっていうとそうじゃない。自分がダメだって思ったときが本当にダメなとき。『変な会社に入っちゃったけど、俺がよくするぞ』とかさ、志を持っていれば絶対に何とかなる。いま、あまりいい環境じゃない中で鬱々としてる人がいるとしたら、それは凄いチャンスだってことに気付いてほしい」

「ダメなことには理由があるんですよ。僕が着任した病院もダメな病院だった。そういう所は、当たり前のことができていないんですよ。当たり前のことをやっていると、必ずいい方向に動いていく。実感としてよくなったことが見えてきたらしめたもの。仲間が集まってきて『じゃあ、ちゃんとやるか!』という大きな流れが生まれてくるんです」

---旅をするうえで一番大切なことは何ですか?
「感動することです。人間は感動すると、幸せホルモンとも言われているセロトニンが分泌されます。旅は感動の連続。心に余裕がなかったり、行き詰まったと感じているときほど旅に出たほうがいいと思います」

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腹一杯っ!

うちのセンターの最上階に展望レストランがあります。このレストランは、人間ドック受診者しか利用できません。そして、このレストランの料理がとても人気があるのです。ここで食べたいからという理由で毎年人間ドックを受けに来るという方は少なくありません。

先日、その展望レストランで「試食」をしました。スタッフ医師である私たちですら、年1回程度のこのときだけしか人気の料理を食べることはできません。一般の方に混じって、いくつかあるメニューの中から「和食セット」を注文しましたら、ほどなく、とても落ち着いた和皿に上品に盛られた料理が盆に載せられて運ばれてきました。

さすがに味は三ツ星レストラン並で、もちろん完食させていただきました。ただ、半分も食べないうちから腹一杯になってきました。昔、「健診受診者は朝から何も食べていないから少し多めに作るのです」と云っていた頃がありましたが、まさか今どきそんなことをする施設はないでしょう。だって、朝を食べていないからといって、昼に高カロリーを食べることは百害あって一利なし、なのですから。なのになぜこんなに腹一杯なのだろう?と考えました。大したカロリーでもないのに腹一杯になった理由は、きっと食物繊維の料理ばかりだからだと思いました。とにかく噛むしかないのです。小さな小鉢は持ち上げにくいので箸で摘むしかなく、そしてとにかく噛まないと飲み込めないのです。「噛む回数が多いとすぐに満腹中枢が刺激される」って、本当なんだと感心しました。

そしてもうひとつの驚きは、いつまでもお腹が空かなかったことです。夜になっても全く・・・。腹が減るまで食べない!と決めたのに、やむを得ずそのまま夕食をとりました。野菜ばかりなのにどうしてこんなに腹持ちがいいのだろう?その理由を知りたいものだと思いながら、一方で昼食を腹一杯とっているであろう世間の皆さんは、きっと夕食時にこんな中途半端な腹模様で食べているんだろうな、と思った次第です。

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感染症の専門家

先日、感染症で国際的に活躍しているあるドクターがテレビでこう云っていました。

「新型インフルに罹(かか)らないためには、きちんとした手洗いをしなければなりません。できるかぎり石鹸を使って、まんべんなく洗ってください。水洗いだけでは「しないよりはまし」程度の意味しかありません」・・・と。そして、実際にゲストの手のひらを細菌培養した結果が示され、多くのコロニーが培養されている姿をみせながら、如何にきちんとした手洗いが大事かということを語っていました。

でも・・・申し訳ありませんが、わたしはどうしても違和感を感じます。サーズやエボラ出血熱など、高い致死率の感染症対策の指揮をとってきた専門家としては止むを得ないのかもしれませんが、手のひらについた雑菌を全部洗い落とすことが日常生活の中でそんなに大切なことなのでしょうか?皮膚の表面にいる常在菌を全部死滅させるような猛毒に自分の健康な皮膚を毎回曝(さら)してしまうことは、新型インフルから身を守るためには重要なのかもしれませんが、果たして本当に自分のカラダのためになると云えるのでしょうか?

わたしはやはり、「ノー」だと思います。もちろん、人混みの中を歩いてきたとか、街中で不特定多数の手が触ったと思える手摺やドアノブを触ってきたときに石鹸を使うのは重要なことだと思いますが、日常生活の中でそんな機会は決して多くはありません。日頃から習慣づけておかないといざというときに忘れてしまうんだ!という考え方も十分理解した上で、それでもやはり基本は十分な流水での手洗いとうがいだけで良い、石鹸は人体には決定的な毒物だ!という考え方の方を支持させていただきたいと思います。

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ナースプラクティショナー(NP)

先日、熊本県保険医協会からアンケートの依頼が届きました。「ナースプラクティショナー(NP:診療看護師)」についてのものでした。

どこかでちょっとだけ聞いたことのある名前ですが、ほとんど実態を知りませんでした。昨年4月に、大分県立看護科学大学でこのNP養成講座が始まったこと、これは、症状が安定した慢性疾患などの患者さんに対して、医師と連携して医療処置の一部を担える能力を備え、外来や老人保健施設、訪問看護ステーションなどでプライマリケアを中心に活動できる職種を目指しているのだ、ということが、趣意書に書かれていました。とても素晴らしいシステムだと思いますし、実際アメリカでは1964年以来約14万人のNPが臨床現場で活躍しているそうです。ただ、日本の場合は諸般の法律(医師法など)で規制されていて、実際にはナースが医者の代わりをすることは許されていません。

こういうシステムを真っ向から反対する医者もたくさん居ますが、わたしはNPに大賛成です。むしろいい加減な医者よりもより真剣に患者さんの人生に対峙してくれる看護師さんがたくさん出てきてくれることは、そのまま患者さんの利益でもあると思っています。ただ、日本の場合、患者さん本人だけでなく家族も、「先生(医者)が診てくれた」ということで得られる安心感は他と比べものにならず、逆に「先生が診てくれなかった」というだけで<手を抜かれた>と思う人が多いのが現実です。同じことをしていても受ける側の満足感が全く違うという国民性に似た感情をきちんと払拭出来ない限り、アメリカなどの欧米社会が成功しているからと云ってもそれと同じ通念では通用しないだろう、という大きな懸念があります。

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小腹が空(す)いた!

お風呂の給湯器が壊れたので、ボーナス払いで新しいのに替えました。自動湯張りをしてくれてとても重宝なのですが、機械の中のお嬢さんが、突然「もうすぐ、お風呂が沸き上がります」と大声で教えてくれるようになりました。そしてその数分後に、これまた仰々しい音楽とともに「お風呂が沸きました♪」と誇らしげなご報告。毎晩のことながら、まだどうしてもこの声に慣れません。

でも、この「もうすぐ」コールがカラダの中ではとても大切です。「小腹が空いた!」は、まさしくこれと同じです。もうすぐ血糖が下がり始めるのでそろそろ準備を始めた方がいいよという合図です。野生動物の世界では、小腹が空き始めたら、そろそろ狩りに出る準備を始めようか!の意味(それから狩りを始めるので、必死で獲物を捕った頃にはもうあまり腹は減っていなかったりする:だから食べ残す)、というのは先日あやのさんが指摘してくれました。こういうことは自然界では常識です。

どうでしょう?「小腹が空いた」を「腹が減った」と同じだと思っていませんか?「小腹が空いてきたからそろそろ夕飯の買い物に出かけましょうか」であって、「小腹が空いたから、とりあえずお菓子でも摘もうか」ではありません。「あ~腹減った!」(2009.10.28)でも書いたように、本当の意味での「腹減った」が体感出来ない理由はきっとこれだと思います。先日とことん腹が減るまで何も食べないでみました。会議をしていて、頭が「疲れた~」と悲鳴を上げました。眠くなってきました。だれかがチョコレートを1個くれました。それを食べたら、す~っと身体中に力が充満し始めるのがわかりました。このとき、「小腹が空いた」との違いを実感できた気がしました。

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75gブドウ糖負荷試験(oGTT)

数ある生活習慣病の中で、糖尿病こそが生命を脅かす一番の敵であることは世界中で認められています。診断法として、国際的に<ヘモグロビンA1c(最近2~3ヶ月の血糖の平均点)>が空腹時血糖より重要である、という考え方にまとまろうとしています。ただ、糖尿病が発症するはるか前から動脈硬化は進んでいってるのだということは、これまでに何度もここでお書きしました。特にインスリン分泌不全の体質をもつ人の割合が多い日本人の場合、平均点のヘモグロビンA1cを見ていたのでは、明らかに後手後手に廻ってしまうことは明白です。

先日の第50回日本人間ドック学会のワークショップで発表された伊藤千賀子先生(グランドタワーメディカルコート)もこのことに言及していました。彼女の自施設データによると、空腹時血糖100mg/dl(正常)でも、75gブドウ糖負荷試験(oGTT)をしてみると2時間後血糖140mg/dl以上の耐糖能異常者が35%もいたそうです。そしてこの状態が10年以上続いて初めて糖尿病が発症するということも明らかにされました。だから、疑わしいひとは積極的にoGTTを行うべきであると云うことになります。

ただ・・・どこでしましょう?「どうやったらその検査をしてもらえますか?」・・・健診でも良く聞かれます。人間ドックでoGTTを受けようと思ったらおそらく2日間ドック(宿泊ドック)を受けないといけないでしょう。一般の内科クリニックでも検査してくれますが検査用の75gブドウ糖の瓶を1本だけ問屋で買うわけにはいきませんので、ひとりのためにわざわざ取り寄せてしてくれるかどうかは聞いてみないとわかりません。第一、「異常値」ではない検査データの人に保険診療として負荷検査をするのは、お役人さんに云わせればまぎれもない「過剰診療」になります。実際に検査を受けようと思ったら、これは意外に難問なのです。

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萎(しお)れの現実

「最近、すごく痩せたんじゃない?」・・・先日、1年ぶりくらいに会った中学時代の同級生にそう云われました。

何云ってんだか・・・きっと前回会ったときの方がはるかに痩せていたはずですよ~。なぜなら、ここ1ヶ月で急にお腹がひっこまなくなったので、危機感を覚えていた矢先のことなのですから。その日も、最初はポロシャツをズボンの中に入れていたのですが、ズボンがパンパンで見苦しいのであえてシャツを出してカモフラージュしていたのです。

腹が出たのに、傍から「痩せた」と思われるのは、(認めたくない事実ですが)つまり「萎(しお)れた」ということです。実際、おそるおそる体重計に載ってみても体重はさほど増えていませんでした。洗面所の鏡の前でポーズをとってみても、まあそれなりに見れないことはないと思いました。ただ、クビレがない!腹が出たというよりも引っ込まなくなった。そして、脇腹と腰が出た(つまり「ズン胴」)。太ももの脂肪を除けば、手も足も決して太くはありません。首筋も細い方だと思います。だから痩せて見えたのでしょう。

これがまさしく老人体型なのです。悲しいことばです。服をきている限り目立たないけれど、立っているとついつい背中が曲がり、下腹を突き出さないとバランスが取れなくなるのです。膝が曲がり、O脚になっていくのです。躓(つまず)きやすくなり、目線が落ちてくるのです。・・・あ~やだやだ!

これくらいグチを並べておけば大丈夫でしょう。現在、第何回めかの肉体改造の序章に取り組み始めたところです。次はどんな身体になるか、乞うご期待!・・・とか云いながら序章で滑走停止にならんようにせねば。

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マヨネーズとコレステロール

先日健診を受けられた60歳の男性のお話です。

毎年受診していただいていますが、LDL(悪玉)コレステロールの値が、122→ 143→ 170と年々増加しておりました。中性脂肪の値も一緒に増加中です。「何か原因になりそうなことはありませんか?」と聞いてみました。「毎日運動はしているし、夕飯は野菜ばっかり食ってるし・・・まあ強いて云えばマヨネーズかな。野菜ばっかりたくさん食べるようになったから、その都度マヨネーズをかけなきゃいかんでしょ?」・・・以前、同じことを云われて、試しにマヨネーズを使わないでみたら良くなったことがあるというので、どうも犯人はマヨネーズだろうということになりました。

もちろん、マヨネーズを使ったからと云ってみんながみんなコレステロールを上昇させるわけではありません。卵を食べたからと云ってみんながコレステロールを上げるのではないのと同じ理由です。野菜にドレッシングの類を何もかけないわたしにはあまり理解出来ませんが、いわゆるマヨラーおじさんにとって、マヨネーズの食感が好きでたまらないらしいのです。それでもまあ、とりあえずマヨネーズがカラダに合わないのだろうということは納得してくれました。

「じゃあ、醤油なら良いですか?あるいは普通のドレッシングならどうですか?」と矢継ぎ早に質問は続きました。「試してみてください。とにかく試して数ヶ月後に採血するしかありません。」・・・そうお答えしましたが、方法はもっとたくさんあります。カロリーオフのマヨネーズや低コレステロールのものもありますし、答がほしいのなら単に試してみれば良いだけのことです。もっとも、マヨネーズを野菜にかけるからいけないのであって、「マヨネーズに野菜を付けて食えばいい」・・・これは食べ方の常識なんですけど、せっかく止める気になっているマヨネーズにこだわらなくてもいいかなと思って、黙っておりました。

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あおもの野菜

健康のために最近は野菜ばかり食っている、というひとも少なくないでしょう。

「毎晩、キャベツばかりバシバシ食ってますから、野菜は十分だと思います。」と、先日受診したある男性が話しました。キャベツダイエットが有名になってから、そういうひとはさらに増えてきているかもしれません。

でも、意外に勘違いしているひとが多いようなので、蛇足的なことですが一応書いておきます。野菜には「緑黄色野菜」と「淡色野菜」がありますが、その区別が十分できていますでしょうか?その違いは<カロテン>の含有量の差です。そして、「緑黄色野菜」にキャベツは含まれておりません。まあ「緑黄色野菜」=「色の濃い野菜」と考えておけば良いでしょう。ニンジンやカボチャなどがこれに当たります。これに豊富に含まれているβカロテンがビタミンAの作用があるだけでなく、動脈硬化を抑え、アンチエイジングに一役買っていることが分かってきてから、一層「緑黄色野菜」がもてはやされるようになったのだと思います。

ビタミンAと云えば鳥目(夜盲症)、先日「肝油ドロップ」(2009.10.5)のことを書いたときにも出てきました。それ以外にも、肌や目に潤いを与え、粘膜保護による花粉症予防の効果もあるそうです。免疫力を高めて多くのがんに対しても効果があるといわれています。さらにその前駆物質であるβカロテンは、抗酸化作用があるために有名になりました。

そういう意味では、せっかく野菜を食べるのだから、緑黄色野菜がどれなのかしっかりと知っておいてください。「青い(緑)から緑黄色野菜」なのではありませんので。もっとも、キャベツの繊維質もまたとっても大切ですので、付け加えておきます。

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電子化の波

外来診療をやっていたころ、人としての患者さんと関わるためにカルテの中に患者さんのプライベートな内容をメモしていたことを、以前書いたことがあります(2008.1.27「カルテメモ」)。

いよいよわたしたちの施設でも、電子カルテ導入が秒読み状態になってきました。それを開けるだけで患者さんの顔が浮かぶ、患者さんと頑張った治療のいろいろや戦ったときの気持ちがよみがえる、さらにその旦那さんや家族の笑い顔まで浮かぶことすらあるような、そんな、昭和でアナログなカルテは臨床の現場からどんどん消えていくのでしょうね。それは、電子カルテにデジカメで撮った写真を添付すれば解決するというものではありません。

大量のデータをあちこちで同時進行で管理でき、患者さんの客観的な情報を得られる電子カルテは、さらに検査した画像をワンクリックでリンクしてパソコンでみることもできます。モダンでデジタルな情報バンクになるのでしょう。うちの健診センターも強大なコンピュータシステムが牛耳っています。新しく導入されてかなり振り回されましたが、少しずつ情報バンクとしての本領を発揮し始めました。どんどん膨れ上がる情報をスマートに整理し、いざというときに必要な情報だけを取り出すことができる、本当に便利な時代になりました。その情報は冷たいほどに無機質で、ムダな形容詞は一切ありませんが。

でも・・・やはり、人としての患者さんと最後まで付き合っていくのが医者であり医療者であるという気持ちを決してなくさないでいてもらいたいと思います。診察室で、患者さんと話をする時間よりも、聴診器を当てる時間よりも、パソコンに向かってキーを叩く時間の方が多くなってしまっては、それは医者ではなくなってしまいます。レントゲン写真をみると誰のものかわかるけれど、患者さんの顔はおぼろげ、なんて笑い話みたいなことにならないようにと、こころから願っています。

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ふとももが細いと早死にする?

世の中には、いろいろな研究をしているひとがいるものです。

「大腿部の径が60cm未満だと早期死亡や心臓病リスクが高くなる」という報告をしたのは、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBerit Heitmann教授です(BMJ 2009: 339)。これは、2800人あまりの男女を10年以上に渡ってフォローした研究ですが、その期間で生存していたひとたちは亡くなったひとたちより除脂肪大腿部が太いことを発見したのだそうです。結局、大腿部が細いことによるリスクは、筋肉量の少なすぎによるものであり、必要であれば大腿部の太さを増加させるために下半身の身体活動を増加させるのが良いのではないか、という結論のようです。

白人さんの研究ですので、ずんぐりむっくりが基本の東洋人に当てはまる研究なのかどうかはわかりませんが、現代の若いお嬢さんの細くてスラッと伸びた長い脚に警鐘を鳴らしていることにはなるのでしょうか。最近、某テレビCMで、ある若いタレントさんの長くて細い脚が気になっていました。ふともももふくらはぎも膝も全部おなじ太さの、ある意味”ずんどう”な脚を眺めながら何かしら違和感を感じずにはおれなかったのです。

もちろん、脂肪が何重にも巻いた太いふとももを推奨しているわけではないことはお判りでしょう。かく云うわたしもご多分に漏れず太くなってきたことを実感しており、そしてこれが筋肉が増えたわけではないことも自分が一番わかっております。筋肉を作るには動くこと。食事療法だけでは筋肉がやせること。・・・どれも重々分かっておりまする。

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エアロビお嬢さんの悩み

東京の病院で働いていたころ、受付のお嬢さんが職員健診の後で憂鬱そうな顔をしていました。中性脂肪の値が高かったので内科を受診したら、
「もっと意識的に運動して、できるだけ野菜を食べてください。」
と、代謝内科の若い医師から紋切り型の指導を受けたのです。

「ねえ先生、これ以上わたしに何をしろと云うの?」・・・わたしに訴えるようなグチるような口振りで話す姿は、かなりご立腹のようでした。なにしろ彼女は、週3~4回、仕事の後にスポーツジムに通ってエアロビや筋トレで汗を流し、食事もほとんどサラダのみのような食生活、アルコールもほとんど口にしませんし、間食のお菓子を貪り食っている姿など見たこともありません。とてもスリムな恰好良いスタイルを保持していました。

こういう方は、ときどきおられます。彼女の場合は、お父さまが糖尿病の持病があったので、遺伝的に脂質を溜めやすい体質を持っていたのかもしれません。コレステロールなら"夢のクスリ"と称するものは当時からたくさんあったので治療も容易ですが、中性脂肪に対しては今でもあまり画期的なクスリがないのが実情です。使うであろうエネルギー量分を血液中に回し、それを使い切るほどなかったから余っているわけですから、先生の助言は正しいと云えば正しいのですが、嫁入り前の若いお嬢さんに、「今以上修行僧のような人生を歩みなさい」と云うのはやはり間違いでしょう。もしかしたら彼女の場合はむしろもっとタンパク質をたくさん摂って筋肉を作らなければならなかったのかもしれませんね(思いつきで書いています。きちんとした根拠で書いていませんので、簡単に感化されませんように)。

なお、こんな若い先生の意味のない一言アドバイスでも「指導料」はきちんと加算できる仕組みになっています。

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脂肪肝は”時限爆弾”

「脂肪肝はいわば”時限爆弾”」という題名の記事を読みました(Medical Tribune 09.10.22)。ドイツのハノーバー医大から(Dr.Heiner Wedemeyer)の報告でした。

それによると、若い脂肪肝患者が増えている現代社会の中、脂肪肝患者の10人に1人が10年以内に脂肪性肝炎に移行し、脂肪性肝炎の10~15%が10年以内に肝硬変に移行するというのです。さらに肝硬変の10~20%がその後10年で急性増悪したり肝臓がんになったりするわけで、これは未治療のまま放ったらかしたC型肝炎とほとんど同じ経過なのだそうです。

脂肪肝の話題は以前書いたことがあります(2008.7.17「脂肪肝の恐怖」)が、もちろんこれの治療の主体は食事療法と運動療法に他なりません。でも、もともと食べるのが大好きであまり動きたくないから、あるいは普通よりエネルギーを貯めるカラダの作りだから脂肪肝になるわけなので、患者さんの多くは「薬で何とかならないのか?」と主張します。でも残念ながらあまり画期的な薬はまだ存在しないようです。フランスの試験で効果が確認されたウルソの高容量投与や、あるいはビタミンEの投与なども、決して十分なものではないのだとDr.Wedemeyerは報告しておりました。

どっちにしても、内服治療というのは、病気の進展の危険性が濃厚な高度脂肪肝患者に関わる話です。わたしもそんな脂肪肝になりやすい体質の保有者のひとりですが、今世の宿命的な命題だと思って日々闘っていくしかないことなのでしょう。

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タイピング・ミス

以前から気になってはいましたが、最近頓(とみ)にひどくなった気がします。

こうやってパソコンで文章を打つのに、何度打ち直していることか?打ち直しても打ち直しても同じ間違いをするのは、ボケ爺のようでちょっと情けなくなります。しかも昨年あたりの悩みと根本が違ってきているのは、ブラインドタッチではないわたしのタイピング・・・ちゃんと「u」を見て打っているのに打たれたのは「i」だったり、「m」のはずが「n」だったり、それを何度も繰り返すということは、頭(目)の指令がきちんと指先に伝わっていないということに他なりません。「それを『年寄り』って云うんだよ」と妻にバカにされるので、まだ誰にも明かしていなかった悩みです。

さらに促音(っ)の抜けや助詞(を、の、に)の抜けが目立つ目立つ!いらない音を加えてしまって妙な漢字変換を促してしまったり・・・グチばっかり・・・あ~きびしい~現実です。めげずに毎日リハビリタイピングを続けていきますので、長い目で追いかけてやってください。

最近、妻にも記憶欠落が出始めてきました。自分たちの間でおきた些細なエピソードを、完全にすっぱり忘れていることがチラホラ出始めました。わたしの10年前と同じ感じです。ただ、自信家の彼女はそれを認めようとせず、すでに記憶に自信のないわたしは強く否定することもできません。どっちも呆けていく中、なんとか正気の時間を長く引き延ばすためにも、タイピングや執筆活動はそれなりに大切なのだと、自分に言い聞かせております。

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