電子化の波
外来診療をやっていたころ、人としての患者さんと関わるためにカルテの中に患者さんのプライベートな内容をメモしていたことを、以前書いたことがあります(2008.1.27「カルテメモ」)。
いよいよわたしたちの施設でも、電子カルテ導入が秒読み状態になってきました。それを開けるだけで患者さんの顔が浮かぶ、患者さんと頑張った治療のいろいろや戦ったときの気持ちがよみがえる、さらにその旦那さんや家族の笑い顔まで浮かぶことすらあるような、そんな、昭和でアナログなカルテは臨床の現場からどんどん消えていくのでしょうね。それは、電子カルテにデジカメで撮った写真を添付すれば解決するというものではありません。
大量のデータをあちこちで同時進行で管理でき、患者さんの客観的な情報を得られる電子カルテは、さらに検査した画像をワンクリックでリンクしてパソコンでみることもできます。モダンでデジタルな情報バンクになるのでしょう。うちの健診センターも強大なコンピュータシステムが牛耳っています。新しく導入されてかなり振り回されましたが、少しずつ情報バンクとしての本領を発揮し始めました。どんどん膨れ上がる情報をスマートに整理し、いざというときに必要な情報だけを取り出すことができる、本当に便利な時代になりました。その情報は冷たいほどに無機質で、ムダな形容詞は一切ありませんが。
でも・・・やはり、人としての患者さんと最後まで付き合っていくのが医者であり医療者であるという気持ちを決してなくさないでいてもらいたいと思います。診察室で、患者さんと話をする時間よりも、聴診器を当てる時間よりも、パソコンに向かってキーを叩く時間の方が多くなってしまっては、それは医者ではなくなってしまいます。レントゲン写真をみると誰のものかわかるけれど、患者さんの顔はおぼろげ、なんて笑い話みたいなことにならないようにと、こころから願っています。
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