奇跡
<コード・ブルードクターヘリ緊急救命2nd>を不覚にも見てしまいました。
救急の世界から足を洗ったあとは、できるだけこの手のドラマは見ないようにしてきました。別に<胸が騒ぐから>ではなく、常に厳しい選択と緊張を必要とする世界のことを考えると重い気分になるからであり、知らない世界ではないだけに、現場はそんなキレイ事では済まされないぞ!と反発してしまうからでしょうか。
主人公の若いドクターのことば、「奇跡を祈らない医者はいない」・・・考えてみたら、わたしもいつもそうだった気がします。心肺停止の患者さんが救急車で到着すると、逸早く無意識に心臓マッサージをし始めるのは循環器科医のサガ。その横で、「これだから循環器科医は・・・」という顔でみるのは脳外科医や脳内科医。「これだけの時間が経ったら、止まっていた心臓はたとえきちんと戻っても脳はまず戻らない。心肺蘇生の成功は時としてすべてのヒトを不幸にさせる。」と、当時のわたしの同僚医師は冷たく言い放っていました。「それでも、奇跡的に回復した症例はある」・・・そう反論すると、「ほとんどない可能性のそんな超奇跡状態を、残された家族に無責任に期待させることは、ほんとうに良いことなのか?」と問い返されるのでした。
救急現場の医療者にとっての勝負は<生きるか死ぬか>の結果ですが、患者さんに関わるすべてのヒトに重要なのは<退院してから先のこと>であることは、きっと皆が分かっていることなのです。でもわたしにはその奇跡を諦めることはどうしてもできなかった、そんなことを思い出しました。
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コメント
こんばんは。
さっそく遊びにきました。
確かにこの問題は永遠に答えがでないものでしょう。
“助けない方がよい場合”というのが本当にあるのでしょうか・・・
私たち医療者にそこまでの権限があるのでしょうか・・・
今日もお話したように、助けたことで皆が不幸になることも場合によってはあります。
こんなふうにいろんなことをお話しできて今日は大変幸せでした。
また、遊びにきます。
投稿: Haruch | 2010年1月12日 (火) 23時59分
Haruchさん
昨日はごちそうさまでした。大変良い時間をありがとうございました。私を認めてくれている人が何人もいることを知ってとても嬉しく思いました。
幸か不幸か、こういう選択の場から離れてしまいましたが、少なくともこんな苦悩を、きちんと自分で考え悩むことのできる医者たちが居なくならないことを祈っています。またお越しください。
頑張りすぎませんように。
投稿: ジャイ | 2010年1月13日 (水) 12時50分