頭痛
「ちょうど詰まっている血管の辺りは痛みを感じ易い部位ですからその頭痛は取れないかもしれません。うまく付き合ってやってください。」
わたしが産業医をしている企業で働くひとりの男性が、ある大学病院の教授からそんなことを云われました。脳動脈瘤に対するカテーテル治療のときに血管解離を起してしまいまして、病変部はそのまま詰まって結果としては事なきを得たのですが、その代償として頑固な頭痛が彼を悩ませ続けているのです。
「医者と云うものは、大事に至らないことに対しては冷たいというか淡白です。腫れ上がっているとかいうのと違って、自分だけが分かる苦しみに対して成すすべがないのは辛いですね。」
「はい。教授も『この程度で済んだのはとてもラッキーだ』というニュアンスの事を云って痛み止めを出してくれました。ずっと付きわないといけないのでしょうか・・・。」
彼はいくつかの大きな病院の脳神経外科や神経内科を受診しましたが結果は同じでした。CTやMRI検査に大きな問題はなく、「筋緊張性頭痛」とか「肩こり」とかの診断名とともに痛み止めをもらってきました。わたしの行きつけの整骨院を紹介して通院もしていますが、1~2週間に1度の通院ではそう画期的な改善は望めません。会うといつも冴えない顔をして覇気のない虚ろな表情をしています。
きっとどこかに彼の悩みをスッキリ取れる方法を知っている医者がいるはず。そう思いながら、無力な産業医であることを痛感するわたしです。とりあえず、どこかの頭痛外来を勧めてみるしかないのでしょうか。
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