いぬの話
伊藤比呂美著: 読み解き「般若心経」(朝日新聞出版)を読みました。
わたしの願いは「般若心経を理解すること」。そのためにこれまでにもいろいろな本を読みましたがまだしっくり来ません。仏教学を学ぶでもなく、高僧のお説法を聞くでもなく、座禅を組むでもなく、写経をするでもなく・・・何の努力もせずに悟ろうなんて甘いわ!と喝を入れられそうですが。そんな中、地元新聞に紹介されていたこの本を買ってみました。最初は<失敗した>と思いました。文章のリズムというかカルチャーというか、何かがわたしのそれとズレていた感じがしたのです。でも読み進めるにつれてそのリズムのズレがだんだん合ってくるのがわかりました。著者ももともと仏教に造詣が深くなかったからかもしれません。母や父の法事の度に、叔母たちに促されて見よう見まねで読経していた、その経本と同じ文字をいくつも発見し、声に出して読むとまさしくあの足のしびれに耐えながら唱えた懐かしい音(おん)が蘇りました。ぎゃーてい。ぎゃーてい。はらぎゃーてい。はらそーぎゃーてい。ぼじそわか。
この本の中に、<読み解き「ひじりたちのことば」いぬの話>という章があります。著者の家にいるジャーマンシェパードが自我を捨てて人間に服従する、凄まじいほどの無我を誇っていたのに、10歳になり、歳とともに頑固な因業老人のごとくに何事にもこだわり始めて自我丸出しになったという話から、安楽死、人間の死と話題が移っていきました。・・・「老いる」姿をその描写にみながら、同じ変化を見せる我が家の老犬たちのことが頭の中によぎりました。イヌに癒されてきた者にとってそれは切ないことですが、同時に自分たちの老いの姿をも物語っている気がします。
最後に並べられた、法然や親鸞の「死」に対することばが、とてもスムーズにこころに入ってきました。
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