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病室の花

「病院では花を禁止すべきか」

先日届いたMedical Tribuneに載っていたロンドン(インペリアルカレッジ)からの報告です(BMJ 2009;339:b5257)。ちょっと面白い記事だなと思って、読んでしまいました。

イギリスでは多くの病院でベッドサイドに花を飾ることを禁止されているというのにはちょっと驚きました。たしかに花の水や土から持ち込まれる細菌によってもたらされる感染は、抵抗力が落ちている患者さんにとっては命に関わる場合も少なくありません。以前、枕もとの鉢植えの花から破傷風に罹った患者さんの報告例を読んだことがあります。でも、「ベッドサイドに飾られた花が患者の酸素を奪う」とか、「医療機器に影響を与える」とか云うのはちょっと考えすぎ、あるいは置き方の問題という気がします。「花の管理は日々の仕事量を増やすという実質的な影響を懸念する」というナースの意見の方は良く理解できました。

お見舞いに花はつき物です。病院の横や病院内の売店には必ず花屋さんがあります。この報告には、花が飾られている病室の患者さんは術後の鎮痛剤の使用量が少なかったとか、血圧や心拍数が少なかったなどという研究結果も紹介されていますが、無機質な何もない病室よりも花や植物などが存在する病室の方が心が癒される気がします。それはきっと、つい最近この空間で人と人の心の交流があった証であり(患者さんが花屋で自ら花を買ってくることは稀です)、「生きているもの」が存在することによって生気が部屋中を包み込んでくれるからではないかと思います。

もっとも、病室のドアを開けると咽(むせ)て咳き込むほどに花だらけになっていて、まるで<棺桶の中>か<祭壇の中>かのように患者さんが花に埋もれている状態は、さすがにやりすぎでしょうけれど・・・。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

癌研か癌センターか
はたまた慶応病院か忘れましたが
生花禁止の病院は
日本にもあるようです

理の部分と
情の部分の
程良い落とし所というのは
難しいのですかね

投稿: hanamegane | 2010年5月 4日 (火) 06時03分

hanameganeさん

おはようございます。本当に仰る通りですね。

基本的には、医学的な弊害を笠に着て管理上の大変さを解決させるために「そんなら禁止!」となっているような気がします。生花はいつかは枯れますが、患者さんは自らに置き換えて、生きているものを枯らしたくない気持ちが水換えの仕事を増やすのでしょうか。

投稿: ジャイ | 2010年5月 4日 (火) 06時42分

こんばんは。
感染管理の概念からいうと、一応切り花はOK、鉢植えその他は駄目となっています。水は勿論変えること。以前感染管理を学んでいるときに、教えてもらったことですが、じゃあアレルギーは?と思いました。というわけで、うちのクリニックには生ものは何もありません。時々切り花が欲しくなりますf^_^;)

投稿: Haruch | 2010年5月 4日 (火) 22時24分

Haruchさん

そうですか。医学(科学)的にはNo!ですか。なるほど。だからこんなことが学会発表のテーマになるわけですね。・・・それでもやはり私は「生きもの」が現場から無くなってほしくないという思いがあります。

アレルギーの問題は、年々深刻になる気がします。「田舎者」が自慢だった私ですら突然ズルズル鼻水が出たりしますが、アレルギーの塊のような妻は、段々何の植物が原因なのかわからないような反応が起きるようになりました。
人間のカラダが現在社会のわらわらを拒絶しているように思います。

投稿: ジャイ | 2010年5月 5日 (水) 19時12分

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