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受診勧奨

「もしも4年前の『便潜血陽性』に対する精密検査をしつこく勧めていたら、この方は手遅れの大腸がんにならなかったかもしれんのだよね。ものすごく大事な教訓だよね。」

内視鏡検査のチーフであるM先生がそうコメントしました。毎年、うちで人間ドックを受けている50歳代のある男性の便潜血検査は2006年からずっと「陽性」でした。「便潜血」は大腸がん検診の基本です。これが陽性の場合は必ず全大腸内視鏡検査を受けるように診療情報提供書が発行されます。医療機関から返信がない場合は3ヶ月後と6ヶ月後に再度受診勧奨することになっています。この男性は結局それらのすべてを放置して受診しませんでした。2008年には<潜血3+>だったのですが、「痔のせいだから受診しない」という未受診理由が書き添えられました。<便潜血2+~3+>は明らかな出血です。肛門近くの出血(一番多いのは痔核)のことが多いのですが、逆にがんの立場から云えば、+度が高いほど悪性腫瘍が存在する可能性が高くなります。「痔がある人にがんがない」わけではないからとにかく内視鏡検査を受けて白黒つけてほしいのですが、仕事が忙しいから放ったらかしていた彼はきっと痔がなくても行かなかったでしょう。今年の検診の後に行った近くの病院で、進行性大腸がんがみつかりました。

わたしたちは、「要精検」に対して医療機関を受診するようにいろいろなアプローチをしますが、それでも理由を付けて受診をしてくれません。うちの施設の便潜血の精検受診率は60%です。うるさく催促して精検を受けてもらっても多くの場合は異常なく、仕事まで休んで受診してもらうことを考えると、受診勧奨とはいえまるで押し売りの営業マンのようにしつこく電話することがなかなかできないのも分からないではありません。でもやはり、残念な結果でした。

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