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ARB発がんリスク問題の波紋

高血圧治療薬として今一番もてはやされているアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)について、これを使うと発がんリスクが上昇する、というメタアナライシス(同じ目的の論文を複数解析して結論を導く方法)がアメリカで報告されました(Lancet Oncology 2010.6.14オンライン版)。

ARBを服用している患者さんは、新規にがんを発症するリスクが有意に高まり(ARB投与群7.2% vs 対照群6.0%)、特に新規の肺がんが発症するリスクは25%も上昇したというのです。「乳がんや前立腺がんには有意なリスク上昇がみられなかった」という項目より、「肺がんが増加した」ということばの方にウエイトが置かれているのはちょっと気になるところです。理論的な意味づけがはっきりしておらず、たまたまの結果の可能性がある、という反論も多々出ているようです。

その因果関係の真偽のほどが何であれ、一番懸念されることは、こんな報告が発表されると、ARB服用中の高血圧患者さんがあわてて服用を自己中止したり、異常に不安がったりする危険性があることです。それがクスリの副作用でも含有物の発がん性物質のせいでもないのに、たまたま飲んでいた薬ががんのリスクを少し高めるからといって高血圧の治療自体を放棄することは、「がんの方が怖い病気」と思っているということに他ならず、自分の病気(高血圧)を甘く見過ぎだと思います。

乳がん患者さんの中でARBを服用していた患者さんの方が乳がん再発率が低下したという報告もアメリカから発表されました。まだ何の因果関係もはっきりしていないのに、「乳がんの既往がある女性の高血圧症にはARBを用いるのが良い選択かもしれない」というコメントが付いてましたが、これもまたちょっと本末転倒な気がします。

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