目は口ほどに・・・
職場の広報誌の発行が最近若干不定期すぎる気がします。毎回発行を楽しみにしていただいている方は意外に多いらしいのですが・・・。内容は以前書いた「マスク小僧たち」が原型です。
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「マスク小僧たち~目は口ほどには物言わず。」
世の中、花粉症でもないのにマスクで顔を覆っている人がたくさんいます。新型インフルが流行した昨年の今頃ほどではありませんが、今でも病院やクリニックは妙に大きなマスクをしたスタッフで溢れています。うちの病院でも、医者や看護師だけでなく、技師や薬剤師、受付の事務職員までもが顔の半分以上を覆い隠しているのをよく見かけます。
感染予防の考え方がしっかりしている証し!ではあるのですが、「他人にことばを伝える」という点においてマスクはとても大きな障害です。先日、救急外来の待合い椅子のところで、若い看護師さんがご年輩の男性の横に跪(ひざまず)いて熱心にクスリの説明をしていました。たまたまその横を通りながら盗み聞きしましたが、もしやこの方は彼女が何を言っているのかさっぱり聴き取れていないのではないか、と気になりました。マスクで口を覆っているために音が籠もってよく聴こえていません。そしてそれ以上に、彼女の表情がまったくわからないのです。人は耳からだけではなく、相手の口の動きや顔の表情を見て言葉を聴き取ります。そのすべてがマスクで覆われて見えません。顔の表情が見えないと、話す人の心の内も見えません。目が深刻そうでもマスクの下では舌を出しているかもしれませんし、せっかく明るく微笑んでいても目が鋭いと叱られているように感じます。昨年、新型インフルが猛威を奮った頃、学会場や会議場では入口に消毒液が置かれるのと同時にマスクも配られました。発表者も質問者も司会者も全員がマスクをしている異様な密室の中で、多くの出席者が痛感したことは、「大きな声で会話しても、マスクは想像以上に意思の疎通の邪魔をする」ということだった、という記事を読んだことがあります。
私も受診者の方々に説明をしている時、結果表や写真を指さす私の手元ではなく口元を見つめている人をよく経験します。何度も私の顔を覗き込むのです。咳のためにやむを得ずマスクをすることがありますが、すると相手はわたしの目の奥に本意を探ろうと凝視し、それでも意味を量りかねて戸惑った顔をみせるので、結局はマスクをずらして顔全体をみせることになります。
目は口ほどには物を言わず!マスクは口と顔を隠します。でも本当に見えにくくなるのは「心」~だから、聞き手が無意識に不安になるのだと思います。重要な伝達手段の大半を自ら放棄している以上、伝える者はいつも大きなハンディを負っていることを意識した伝達者であっていただきたいと、世間の「マスク小僧たち」を眺めながら思っています。
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