一次予防と二次予防
「それは二次予防じゃなくて一次予防でしょ!」・・・むかし、ある生活習慣病の研究会で、その研究会の重鎮である某先生にそう意見されたことがあります。
肥満症の患者さんにフィットネスセンターで運動を試みた成果をうちのスタッフが発表したときのことです。予防には一次から三次まであります。「一次予防」は未病の状態を病気にさせないこと、あるいは病気とは縁のない健康的な人生を送ること。「二次予防」は病気を早期に発見し、早期のうちに治療して病気を進行させないようにすること。そして「三次予防」は不幸にして合併症を起こしてしまったときに再発させないように対処すること。たとえば、高血圧症を例にとると、軽度高血圧の段階で運動や食事療法に取り組んだり早期に内服を始めたりすることは二次予防、高血圧にならいようなライフスタイルを日頃から心掛けることが一次予防、脳卒中になったので再発しないように血圧のさらなる厳重管理をすることが三次予防、ということになります。
では、肥満症はどうでしょう。<肥満>と違って<肥満症>は「症」が付くのだから病気です。だから肥満症の治療は「二次予防」だ!とわたしは主張したいのです。以前から、<軽度高血圧症>のことを「ちょっと高めの血圧」と云い、「まだ治療するまではないけれど今のうちから注意しておいた方が良い」とか、<脂質異常症>のことを「ちょっとコレステロールが高いから気をつけた方が良い」とか、そういうオブラートに包んだ云い方をするのが健診業界の慣例のようで、臨床現場からこの世界に移ってきたときにもの凄いカルチャーショックを覚えました。<軽度高血圧症>や<脂質異常症>は立派な病気なんだから、それを運動と食事で改善させるのは、誰が何といても「二次予防」だ!
・・・心の中でそう叫びながら、じっとその重鎮の先生のご意見を呑み込みました。
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