高齢者の減量は有効
わたしの医療雑学の知識の源"Medical Tribune"で、読まないでずっと切り抜いたままになっていた「高齢者の意図的な減量は有効~過去の有害説を否定」という記事をやっと読むことができました。
Journal of Gerontology:Series A(2010;65A:519-525)という雑誌に報告されたウェイクフォレスト大学バプテスト医療センターのM.Kyla Sheaらの研究報告です。膝関節炎を有する高齢地域住民を対象に、減量と身体活動が身体機能に及ぼす効果を検討するために積極的減量介入群と非介入群に分けて8年後の生存状況を調べました。その結果、減量を目的に身体活動あるいは食事改善を行った群の死亡者数は行わなかった群の半分しかいなかったのだそうです。つまり、「高齢者の肥満関連の健康問題に取り組む際、減量の推奨を懸念する必要はない」と云うのです。
「高齢者はムリに体重を減らすとかえって死亡率が上昇する」というのが、医療現場の常識でした。世のダイエットブームとメタボ健診の影響で、運動や食事療法に一生懸命に取り組むのはいつも高齢者の皆さんなわけですが、ある程度の年齢になったら、「体重を減らすことは必ずしも良しではない、ただ萎んでいるだけだ」と説明して、減量志向を改めさせるようにしてきました。ですからこの報告は驚きでしたし、頑張る高齢者の励みになるだろうなと思いました。
「高齢者は減量により高血圧や高コレステロール、高空腹時血糖値など複数の健康問題が改善するのに、世の医師たちは死亡リスクを気にして高齢者に減量を薦めるのに抵抗を感じている。」
「高齢者で蔓延する肥満に取り組むうえで、障壁となる数々の根拠のない懸念を解除するものだ。」(Kritchevsky所長)
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コメント
この発表は結構インパクトがありましたね。
従来の定説が『疫学研究からの誤解』というのが面白い。
さて、明日からの健康指導、どうしましょう?
投稿: Haruch | 2010年8月19日 (木) 00時47分
Haruchさん
おはようございます。
実際のところは、アンチエイジングのためにも運動は欠かせませんし、適正な食事療法は老若男女を問わず現代社会の必須事項ですから、目標を「体重減少」ではなくて「健康長寿」にすれば良いだけのような気がします。「痩せた痩せた!」と喜んでいるご高齢の皆様には、今まで通り、そのこと自体にはさほど意味がないことを伝えるつもりです。ただ、やはりモチベーション維持のためにはこういう報告は大事ですね。
Haruchuさん、遅れ馳せながら、誕生日おめでとうございます。ますますのご活躍を期待します。
投稿: ジャイ | 2010年8月19日 (木) 06時20分