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いらだち(前)

「ベル、おしっこに行くよ」

我が家の老犬を夜中に庭に連れ出します。寝る前におしっこをさせておかないと彼女は必ずおねしょをするのです。覚束(おぼつか)ない足取りで階段から降りてきた彼女は何の躊躇もなく庭に出て、辺りをグルグルと回り始め、気に入った場所を定めておもむろにおしっこを始めます。ところが決していつもそうスムーズにいくわけではありません。何が気に入らないのか、何度もグルグル回った挙げ句にちょっと屈んだフリをして、何もしないで澄まし顔で家の中に入ろうとするのです。「まだおしっこ終わってないでしょ!」と強く叱って追い返しますが、またひとしきり庭をうろうろしてから顔色を伺って帰ってきます。「誤魔化してもダメだよ!」・・・入口前に仁王立ちになったわたしは腕を組みながら彼女とにらめっこです。出ないはずはないのです。散歩に連れ出したら家を出た瞬間に大量のおしっこをするのですから・・・。

夜中ににらめっこを続けるうちに、自分の中のいらだち度が急激に増すのがわかります。同じ事を繰り返し、闇の中で何をするでもなくボーっとしている姿を見ているうちに「早よせんか!」と口調まで厳しくなり「なにしよんのか!いい加減にしろよ!」と夜中であることを忘れて大声を張り上げたり、叩いたり・・・。「その気がないのならあきらめて中に入ったら?」とか「庭じゃなくて表に連れ出したらすぐするんじゃない?」という妻の声に対して「そんなことをしたらつけあがるから絶対おしっこするまで入れない!」と頑なに拒んで庭で老犬とにらめっこする自分は、何と了見の狭い男だこと。

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