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「軽度異常」の功罪

健診では結果の判定に「軽度異常」ということばがあります。「異常なし」ではないけれど「経過観察」ほどではないレベルの結果に対して使われます。先日、「『軽度異常』はほとんど『異常なし』と同じなのだから説明しなくても良いのではないか?」というニュアンスの意見が出て、わたしは断固反対しました。「軽度異常」には、たとえば<基準値が47以下なのにそれが47.1だった>などという、ほとんどコンピューターの嫌がらせのような無意味な「軽度異常」もあれば、血圧138/88mmHgなどの<正常高値>判定としての「軽度異常」もあります。あるいは腹部エコーの「腎のう胞」や心電図の「洞性徐脈」など、異常の意味合いはまったくないけれど所見を書いたから「異常なし」にできない、という統計的な事情の「軽度異常」も含まれます。

わたしは結果説明の7割方を「軽度異常」の説明に費やします。「要精密検査」や「要治療」は病院受診させれば良いだけの話だから時間をかけるのはもったいない。むしろ「軽度血糖高値」にかくれた糖代謝異常や「軽度腎機能低下」の抱えている意味をきちんと理解してもらい、今から生活を変えることの重要性を理解してもらうために時間を費やすのが、健診医の最大の義務だと信じているからです。

「この『軽度異常』の『異常』ということばがおかしい。異常じゃないのだったらこのことばを消すべきだ!」と強く主張されたこともあります。健診結果は、試験の成績発表を聞くのと同じようなものですから、「異常なし」が「軽度異常」になるのは受診者本人にとっては不本意極まりないことのようです。

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