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穴が埋まる

先日、メンタル失調の休職のあとに復職をしている若者の相談を受けました。仕事に戻っては居ますが、ちょっとしたことで(特に疲れが溜まると)昔のことが鮮明に思い出されて眠れなくなるのだと云います。ですからこれまでも何度か時間を作って話を聞きました。

今回は夕方から2時間近くゆっくりと話を聞く時間が取れました。今の心情と納得のできない内容の説明から始まって、昔の経緯になるに従って説明はどんどん細かくなっていきました。2時間のうちに何度も同じフレーズがでてきます。わたしは時々自分の意見は云いますが基本的にじっと彼の話を聞きました。これらの流れは程度の差こそあれほとんどいつもと同じです。ただ、今回は少しだけ違っていました。そのことに彼自身が気付きました。

「ずっと自分を苦しめていた理不尽さや不満の原因は『自分をこんなカラダにさせた上司の○○と△△』だと思っていました。だから彼らが何ら処罰もされずにのほほんとのさばっているのが納得行かず恨んでいました。でも今日先生に話していたら、自分の頭の中が少し整理されてきたような気がします。わたしの不満は、自分のせいでもないのに病気になりそのために休職を余儀なくされた期間の『失われた自分を返してもらっていない』ということに対してなのだということがわかってきたんです!」・・・自分をこんなカラダに追いやった連中のことは許せないけれど、でも彼らがどうなろうと本当はどうでもいい。ただ、失われた自分の数ヶ月間の穴埋めができていないこと、ここに誰も触れてくれないことへの不満が自分を苦しめているのだということに気付いたというのです。

彼の言葉はそれだけに留まりませんでした。昨年入院したことは自分を見つめる時間をもらったのでとても良かった。最近は自分をスタッフの中の1人として数に入れてもらっていることには感謝している。・・・初めて言葉の端々に肯定的な内容が出始めているのです。少しずつ自分の力で穴埋めを始めることができてきたことを物語っているのだと思います。実習生に指導する機会をもらい、「常に愛情を持って指導することが大切なのだ」という彼の表情がとても嬉々としていたのが印象的でした。

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