強運
” 医師に必要なものとして、誠実さとか優しさとか、人間愛とか自己犠牲だとか、的確な判断力だとか冷徹な技術だとか、鬼手仏心だとかいろいろなことが言われます。しかしわたしが思いますに、医師として何よりも大事なのは運の強さです。
強運-これに勝るものはありません。自分を守り相手をも守る強烈な運の強さ。必要なのはこれです。これさえあれば、死にかけの患者へ下手な処置をしても助かります。逆に運の悪い医者は、どれほど善人かつ技術に優れていても、「治療は見事だったが、患者は死んだ」といった結果になります。ひどい話です。”(”「治らない」時代の医療者心得帳” 春日武彦著 医学書院 P29)
考えてみるに、わたしはこの「運の強さ」だけで今”医者”の称号を曲がりなりにも振りかざすことができているのだと思います。世間はどうしてわたしをこうも買いかぶるのでしょう?わたしが尊敬する恩師H先生など、H先生の洞察力をもってすればわたしの実力などすべてお見通しに違いないと思うのに、「先生は優秀らしいねえ。H先生がいつも褒めていたよ」という異常にくすぐったいことばを他の病院の先生から聞くと、おだてられているに違いないと思いました。大した勉強もせずいい加減な自己流知識でハッタリかまして臨床医をしてきて、医者らしからぬ言動を繰り返し、最近では医学論文すらほとんど読まなくなった似非医者なのに、どうしてわたしを優秀な医者だと思うのか理解できませんでした。でもまあ、春日先生のこのことばを借りるなら、やはりわたしは”優れた医者”なのだと胸を張ってもいいのかなと思い直しました。この強運が続く限りはその筋斗雲のような雲に乗り続けておきましょう。
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